「自分がこんな性格じゃなかったら、もっとうまくいくはずなのに!」「どうしてこんなにネガティブな性格なんだろう…」など、自分の性格に不満を持っている人は少なくありません。
しかし、多くの人は「生まれつきこういう性格だから仕方ない」と諦めてしまっているのではないでしょうか。
今回は、そもそも性格を変えることができるのかについて分かりやすく解説します。
また、性格を変えるための方法やポイントもお話しします。
性格は変えることができるの?
「三つ子の魂百まで」は本当?
日本には「三つ子の魂百まで」ということわざがよく知られています。これは3歳の頃の性格は100歳になるまで変わらない、つまり「幼い頃の性格は年をとっても変わらない」という意味を表しています。
しかし、これまでの自分をよく振り返ると「意外とそうでもないな」と思うことも多いのではないでしょうか。
例えば、同窓会で久しぶりに友人と会って「なんだか性格が変わったなぁ」と感じることがあります。
また、あなたの幼い頃を知っている親や親戚から「小さい頃のあなたは〇〇だった」と今の自分との違いを指摘された経験を持つ人もいらっしゃるでしょう。
必ずしも「三つ子の魂百まで」は正しいわけではないのです。
遺伝的な性格を変えるのは難しい
性格は「遺伝」と「環境」の2つの要因が相互に作用して形成されると考えられています。
生まれてすぐの赤ちゃんにも刺激への敏感さや気分の変わりやすさなど、性格に違いが見られます。
これら生まれ持った性質を「気質」と呼びます。
この気質は体質や神経の構造によって規定されているため、変えるのは難しいと考えられています。
環境でつくられた性格は変えることができる!
先ほどご紹介した遺伝的な気質を土台としつつも、性格形成には環境の影響も無視することはできません。
例えば、活発な気質を持っている子どもでも、厳しく行動を制限するような親のもとで育てられると、次第とおどおどと自信のない性格に代わってしまうことがあります。
反対に、生まれ持った気質としては大人しく引っ込み思案な子どもでも、自分を受け入れてもらえる環境ではのびのびと活動できることも珍しくありません。
性格は環境次第で変えられる可能性を秘めているのです。
性格について詳しく知りたい方は下記の記事もご覧ください。
性格を変える方法とは?
今の自分の性格を理解する
性格を変えるためには、そもそも今の自分がどのような性格であるかを正しく理解することが大切です。
まずは自分の性格を知る方法をご紹介します。
エゴグラム診断を試す
性格を知る方法の1つが「エゴグラム」による診断です。
アメリカの精神科医であるバーン(Berne,E.)は人の心について、「自我状態」と呼ばれる次の5つの要素から構成されていると考えました。
- 批判的な親(CP):厳格な父親のように叱責や批判を行う部分です。
- 養育的な親(NP):優しい母親のように受容的で思いやりのある部分です。
- 大人(A):客観的な事実をもとに冷静な分析・判断を行う部分です。
- 自由な子ども(FC):自分の本能や感情のままに自由にふるまう部分です。
- 順応した子ども(AC):親から受けたしつけに従い、感情を抑えて「いい子」にふるまう部分です。
そして、バーンの弟子であるデュセイ(Dusay,J.)が、この自我状態のエネルギー配分をグラフ化することで、客観的に性格を捉えるべく考案したのが「エゴグラム」です。
特にしっかりとエビデンスがあるエゴグラムが「東大式エゴグラム(TEG)」です。
これは医療機関などで受検でき、結果についてもきちんと説明を受けられます。
また、インターネット上でもエゴグラムを体験できるサイトはたくさんあります。
エビデンスは不確かなものが多いですが、自分の性格を知る1つの方法として活用することはできるでしょう。
自分の性格について友人に尋ねてみる
私たちは「自分はこんな人間だ」「私はこういう人間でありたい」という自己像を持っています。
しかし、他者からは全く別の部分が見えていることは少なくありません。
自分の性格を別の角度から見るためには、身近な友人に「私ってどんな性格に見える?」と尋ねてみるのがおすすめ。
思いがけない自分の性格に気づくかもしれません。
自分の性格を形成した要因を探る
今の自分の性格を理解できたら、「どうしてこんな性格になったのか」という要因を探ってみましょう。
例えば、大きな失敗をして「自分はダメな人間だ」という後ろ向きの性格が形成された人もいれば、他者から「お前は何もできない」と否定され続けてきた結果、「自分はダメな人間だ」と思うようになった人もいます。
同じ「自分はダメな人間だ」というネガティブな性格ですが、背景にある要因は異なります。
前者は自分に出来るものを見つけることで性格を変えるヒントを得られるかもしれませんし、後者の場合はまず自分を否定する他者から距離を置くことが性格を変える第一歩となるかもしれません。
これから、どのように性格を変えていくか考えるためにも、自分の性格をつくりあげてきた要因を見つめる作業は大切です。
理想の性格を持った人の行動を真似する
漠然と「明るい性格になりたい」と思っても、何から始めればいいかイメージしづらいことも多いのではないでしょうか。
カナダの心理学者バンデューラ(Bandura,A.)が提唱した「モデリング理論」では、他者の行動を観察することで同じような行動が促進されると考えられています。
そのため、まずは理想の性格を持った人を見つけ、その人がどのように人と接しているか、どんな話し方をしているかなど、その行動をよく観察してみましょう。
そして、できるところから真似してみてください。
最初はぎこちなくても、少しずつ身についていくはずです。
性格を変えるために大切なポイント
無理に性格を変えるよりも性格の幅を広げる
自分の性格が嫌なあまりに「ネガティブな性格をポジティブに変えよう!」と、これまでの自分と真逆の考え方や行動を目指す人がいます。
しかし、無理に「ポジティブにしなきゃ!」と思うと、心も身体も疲れがたまり、途中で挫折してしまうこともあります。
また、なかなかポジティブになれない自分に否定的になってしまうかもしれません。
しかし、性格は必ず1つだけに絞る必要はありません。
むしろ、たくさんの性格を持っている方が場面に合わせて使い分けられて便利です。
ネガティブな性格も大切な性格の1つとして心にしまっておき、新たにポジティブな性格も自分の中に増やすつもりで取り組んでいきましょう。
焦らず行動や習慣を変えれば性格も変わる
かの有名なマザーテレサは次のような名言を残しています。
思考に気をつけなさい それはいつか言葉になるから
言葉に気をつけなさい それはいつか行動になるから
行動に気をつけなさい それはいつか習慣になるから
習慣に気をつけなさい それはいつか性格になるから
性格に気をつけなさい それはいつか運命になるから
マザー・テレサ
人の思考が言葉→行動→習慣→性格と影響を及ぼし、ゆくゆくは運命まで変えてしまうことを示しています。
性格も「性格そのものを変える」というところからスタートするのではなく、考え方や行動などを変えていくことから始めるのが大切です。
性格を変えたくない自分も受け入れる
今の性格はこれまでの環境から自分を守るために形成されてきたものです。
例えば、自己主張せず受動的な性格は、自分の意見を主張すると親に怒られたり、友達から仲間外れにされたりしたために、まわりの人とうまく関わる方法として作られたのかもしれません。
また、人見知りをする性格は、自分に危害を加える人から距離を置くための工夫の1つとして生まれたと考えることもできます。
そのため、なかなか性格を変えられないときは「性格を変えると自分を守れなくなる」という不安が沸き起こっている可能性があります。
性格を変えるときには「性格を変えたくない」と怖がる自分も否定せずに受け入れ、「ほら、性格を変えても大丈夫」と確かめるような気持ちで、ゆっくりと取り組んでいきましょう。
まとめ
性格は遺伝による先天的な性質と環境による後天的な性質で構成されており、環境によって形成された部分については変えることができます。
まずは自分の性格を形成してきた要因をよく知り、適切な対処を取るようにしまよう。
また、理想となる性格を持つ人を観察・真似することも性格を変えるのに効果的です。
ただし、性格を変えるまでには時間がかかります。
焦らず、無理せず、一歩ずつ進んでいくことが大切です。