悩みを1人で抱えるのは良くないと思いつつ、「身近に相談できる人がいない」「専門知識のある人に相談したい」という場合に活用したいのが、カウンセリングです。
しかし、カウンセリングを受けたことのない人にとっては「カウンセリングって効果あるの?」と疑問に感じるかもしれません。
そこで、この記事では、
- カウンセリングで得られる効果
- カウンセリングの効果を発揮するために必要なこと
- カウンセリングに効果を感じないときの対処法
の3つを、実際にカウンセリングを実施してきた専門家が分かりやすく解説します。
なお、「カウンセリングがどんなものか分からない」という方は、先にカウンセリングとは何なのか心理学の専門家が解説をお読みください。
カウンセリングで得られる効果は?
1人で抱えていたことを話せてスッキリする
悩みを抱える人ほど、
- 「迷惑をかけたくない」と思って、誰にも相談できない
- 悩んでいる自分に気づかれないよう、元気な自分を演じる
など、本当の気持ちを抑えつけてしまいがち。
しかし、「悩みを聴く」という役割を持つ専門家であるカウンセラー相手なら、迷惑をかけることを心配したり、悩む自分を隠したりする必要はありません。
カウンセリングで本当の気持ちを解放すれば、心がスッキリと晴れ渡ります。
自分の考えや気持ちを整理できる
私たちは社会に適応するため、知らず知らずのうちに自分の考えや気持ちを抑え込むクセがついています。
そのため、つい「つらい」「苦しい」という気持ちを無視して頑張ってしまい、気づいたときには、心や身体が悲鳴をあげている…ということもあるのです。
カウンセリングでは、あなたが抑え込んでいた考えや気持ちを自由に話すことができます。
そして、「私はこんなことを考えていたんだな」「私は〇〇がつらかったのか」など、自分の考えや気持ちが整理されていくと、「どうすればもっと肩の力を抜いて、自分らしく生きていけるのか」についての答えが見えてきます。
自分の考え方や習慣を修正できる
私たちは生まれてから現在に至るまでの間に、一定の考え方や習慣を身につけていきます。
例えば、親から「100点じゃなきゃダメ」と叱られていた人は、親に認めてもらうために、ほんの少しのミスを許さない完璧主義な性格になっていくでしょう。
しかし、親からは褒めてもらえた完璧主義な性格が、学校や職場では「もっと要領よくやれよ」と否定される原因になることもあるのです。
このように、1つの場所では適応的だった考え方や習慣が、別の場所では不適応を引き起こすことがあります。
カウンセリングでは、不適応の原因となっている考え方や習慣に目を向け、その考え方や習慣があなたを守ってくれたことを認めると共に、これからの人生に向けた新しい考え方や習慣を手に入れられるよう取り組んでいきます。
カウンセリングの効果を発揮するために必要なこと
自分自身を見つめる
カウンセリングでは、自分自身を見つめることが何よりも大切。
「カウンセラーはこんな話をされて、嫌じゃないだろうか?」など気にして、カウンセラーに配慮した言葉ばかりを話すと、カウンセリングがうまく進まなくなってしまいます。
カウンセリングはあなたが主役。
カウンセラーではなく、自分の心や身体に向き合うことを心掛けましょう。
しんどさやつらさを他者と比較しない
カウンセリングに来られた方の中には、「もっとしんどい人もいるから、私なんてまだまだ大丈夫」など、周りの人と比較して、自分のしんどさやつらさを否定してしまう人がいます。
しかし、しんどさやつらさは他者と比較するものではありません。
あなたが「しんどい」「つらい」と感じたなら、それを素直にカウンセリングの場で吐き出してみましょう。
症状がつらい場合には上院受診を優先して
カウンセリングでは、自分の考えや気持ちを言葉にすることが求められます。
しかし、
- 不眠が続いているとき
- 頭痛や吐き気などの症状が酷いとき
- 心や身体が疲れていて思考がまとまらないとき
- 妄想や幻覚に捉われているとき
などは、カウンセラーと落ち着いて対話することは困難です。
もし、この時期に無理にカウンセリングを受けても、効果が得られないどころか状態が悪化してしまうことも考えられます。
まずは、病院を受診し心と身体を休めることが最優先。
そして、症状が和らいだら主治医と相談の上でカウンセリングを受けるようにしましょう。
カウンセリングの効果を感じない時の対処法
カウンセラーに効果を感じないことを伝える
「カウンセリングに効果を感じない」と思ったら、その思いをカウンセラーにそのまま伝えてみましょう。
力量のあるカウンセラーであれば、そう伝えてくれたあなたの勇気に感謝すると共に、なぜ効果を感じないのかを見立て、きちんと説明してくれるはずです。
また、カウンセリングがより深まるきっかけにもなりえます。
特定の疾患の悩みなら効果が確立されている治療法を選ぶ
丹野(2001)*1は、自身の論文の中で、アメリカ心理学会(APA)による「十分に確立された治療法」を紹介しています。これを下の表1にまとめます。
表1 APAによる「十分に確立された治療法」

この表1を見ると、例えば「うつ病」に悩む方は、認知療法や対人関係療法が効果的だと分かります。
特定の疾患に悩んでいる場合には、その疾患に対する治療効果が実証されているものを選ぶと効果を感じられるカウンセリングとなるでしょう。
相性が合う別のカウンセラーを探すのも1つの方法
カウンセラーに対し、「相性が合わない」と感じたら別のカウンセラーを探すのも1つの方法です。
ただし、「カウンセラーと相性が合わない」という感覚は、あなた自身が持つ「他者を信じられない」とか「自分の気持ちを全て分かってほしい」といった考え方から来ている可能性もあります。
自分自身の考え方のクセと向き合わずに「カウンセラーが悪い」と考え、別のカウンセラーに移ることは、自分自身を変えるチャンスを失うことにもつながります。
すぐに別のカウンセラーに目を向けるのではなく、「どうして相性が合わないと感じるのか」をよく検討することも大切です。
まとめ
この記事では、「カウンセリングの効果」「効果的なカウンセリングの受け方」「効果を感じないときの対処法」について解説しました。
カウンセリングで得られる効果としては、
- 1人で抱えていたことを話せてスッキリする
- 自分の考えや気持ちを整理できる
- 自分の考え方や習慣を修正できる
という3つが挙げられます。
また、カウンセリングの効果を発揮するためには、
- 自分自身を見つめる
- しんどさやつらさを他者と比較しない
- 症状がつらい場合には病院受診を優先する
という3点を意識することが必要です。
カウンセリングの効果を感じない時には、現在のカウンセラーに効果を感じないことを伝えて話し合うと共に、自分の疾患に効果的な治療法や相性が合うカウンセラーの選択も視野に入れておきましょう。
参考文献 *1 丹野義彦(2001)実証に基づく臨床心理学に向けて 教育心理学年報 40 pp157-168.