カウンセリングを受けようと思った時に、料金の高さに驚いたことはありませんか?
カウンセリング料金が高額になりがちなのは、保険適用外だから。
「カウンセリングも治療の一環なのに、どうして保険が適用されないの?」「病院のカウンセリングには保険が適用できると聞いたような…」など、さまざまな疑問が浮かぶかもしれません。
そこで、この記事では、
- 多くのカウンセリングが保険適用外である理由
- カウンセリングが保険適用されるための条件
を詳しく解説します。
また、「保険が効かないならカウンセリングは受けられない…」とお困りの方に向けて、できるだけカウンセリング費用を抑える方法もご紹介しますので、こちらもあわせてご覧ください。
多くのカウンセリングが保険適用外である理由
カウンセリングでは「同じ内容」で「同じ効果」を得るのは難しいから
保険が適用される治療を「保険診療」と呼びます。
保険診療は、
- 安全性や有効性が確認された医療行為に適用される
- どの医療機関でも「同じ内容」の診察であれば、同じ金額で受けられる
- 医療費の自己負担は3割に抑えられ、お金の心配を軽減できる
といった特徴を持っています。
ところが、カウンセリングでは「有効性」を示すのが困難です。
Aさんには効果的だった方法が、Bさんには効果がない…ということもよく起こります。
また、何を効果と判断するかも人それぞれ。
「誰にも言えなかったことを話せて気持ちが軽くなった」ということを「効果があった」と感じる人もいれば、「どれだけ話を聞いてもらっても、問題が解決しないと意味がない」と思う人もいます。
そのため、同じ内容で同じ効果を目指す保険診療とカウンセリングはなじみにくいのです。
カウンセラーとクライエントの両者で取り組むから
「医療行為」は、主に医師の責任で提供されます。
治療について医師と患者とで話し合うことはあっても、最終的な判断や指示は必ず医師が行います。
医師が「治す/解決する」立場なのです。
しかし、カウンセリングではカウンセラーがクライエントを治すわけではありませんし、クライエントの問題を代わりに解決するわけでもありません。
カウンセラーはクライエントに寄り添い、クライエント自身の力で問題が解決できるよう支え続けます。
そして、カウンセラーに支えられたクライエントは、1人では向き合えなかった問題に取り組んでいきます。
両者が互いに力を合わせることで、悩みや問題を解決していくのです。
そのため、カウンセリングは保険適用できる「医療行為」とも少し毛色の違うものになっています。
カウンセリングが保険適用されるための条件
カウンセリングの一部には「精神科専門療法」として、保険適用されるものがあります。
ここでは、そんな保険適用されるカウンセリングの条件を見てみましょう。
医師による通院・在宅精神療法を受ける
「通院・在宅精神療法」とは、精神疾患や精神症状を伴う脳器質性障害を持つ人に対して、精神科医が一定の治療計画のもとに、
- 危機介入
- 対人関係の改善
- 社会適応能力の向上
を目的とした指示や助言などの働きかけを継続的に行うことを指します。
注意したいのは、通院・在宅精神療法を実施できるのは「精神科」の看板を掲げた保険医療機関で「精神科を担当する医師」に限られるということ。
「心療内科」では、通院・在宅精神療法を受けられないため、注意が必要です。
医師による標準型精神分析療法を受ける
「標準型精神分析療法」とは、思いついたことをそのまま話す「自由連想法」を使って、症状の原因となる体験や感情を分析し、自己理解を進めていく中で、症状や悩みの改善を促す治療法です。
保険適用できるのは、
- 標準型精神分析療法に習熟した医師
あるいは、
- 「精神科」の看板を掲げる保険医療機関において、標準型精神分析療法に習熟した心身医学を専門とする医師
によって行われた場合に限られます。
どの医療機関でも受けられるわけではないため、「精神分析を受けてみたい」と思っている方は、事前に問い合わせてから受診するようにしましょう。
医師や看護師による認知療法・認知行動療法を受ける
「認知療法・認知行動療法」とは、認知の偏りを修正し、問題解決を手助けする治療法です。
対象となるのは、
- うつ病等の気分障害
- 強迫性障害
- 社交不安障害
- パニック障害
- 心的外傷後ストレス障害
- 神経性過食症
の患者さんです。
なお、入院中の場合は受けることができません。
精神科以外の保険医療機関でも、
- 認知療法・認知行動療法に習熟した医師が30分を超えて実施
- 看護師による30分を超える面接+上記の医師による5分以上の面接が行われる
という条件を満たせば、一連の治療の「16回」に限り、保険が適用されます。
医師と公認心理師による小児特定疾患カウンセリングを受ける
「小児特定疾患カウンセリング」とは、特定の疾患を持つ乳幼児期や学童期の子どもを対象とするカウンセリングです。
また、子どもと一緒であれば家族もカウンセリングを利用することができます。
小児特定疾患カウンセリングの対象となるのは、以下のような障害や問題を抱えた子どもです。
- 気分障害
- 神経症性障害
- ストレス関連障害
- 身体表現性障害
- 摂食障害など生理的・身体的要因に関連した行動症候群
- 自閉症など心理的発達の障害
- 多動性障害など行動や情緒の障害
- 不登校の子ども
- 虐待を受けていた、またはその疑いがある子ども
小児科または心療内科の医師の指示のもと、公認心理師が20分以上のカウンセリングを行った際に保険適用されます。
ただし、カウンセリングの初回は医師が担当し、公認心理師とカウンセリングを継続する場合にも3回に1回は医師がカウンセリングを行う必要があります。
グループカウンセリングを受ける
グループで受けるカウンセリングでも、保険が適用されるケースがあります。
■通院集団精神療法
「通院集団精神療法」は、精神疾患を抱えた方がグループでの対人関係で起こる相互作用の中で自分自身への理解を深めると共に社会適応や対人関係のスキルを高めることで症状の改善を図るものです。
「精神科」を掲げる保険医療機関で、「精神科を担当する医師」+「精神保健福祉士または公認心理師等」によって構成される2人以上が治療に当たることで保険適用されます。
■依存症集団療法
「依存症集団療法」は、
- 薬物依存症
- ギャンブル依存症
を抱えた方を対象としたグループでのカウンセリングです。
精神科医または、精神科医の指示を受けた看護師、作業療法士、精神保健福祉士、公認心理師によって構成される2名以上(そのうち1名は精神科医、看護師、作業療法士)が治療にあたることで保険適用されます。
なお、公認心理師は出来て間もない資格であるため、保険医療機関で働いてきた「臨床心理技術者」を当面の間、公認心理師とみなす〈みなし規定〉があります。
現時点では、
- 公認心理師
- 平成31年3月末まで保険医療機関で働いてきた臨床心理技術者
- 公認心理師の受験資格保有者
の3者が「公認心理師」として扱われるため、実際のカウンセリング場面では公認心理師の資格を持っていない心理職に出会うこともあります。
この章で登場した精神分析や認知行動療法、グループでのカウンセリングについてもっと詳しく知りたい方はカウンセリングの種類を心理学の専門家が解説【形態・療法別】もあわせてご覧ください。
保険適用外の高額なカウンセリング料金への対処法
無料カウンセリングを活用する
精神保健福祉センターや保健センターなどの公的な機関には、経済的な余裕がない人でも負担なく利用できる無料の相談窓口が設けられています。
また、小学生から高校生の子どもがいるご家庭であればスクールカウンセラーも利用できますし、企業で働いている人は社内に「企業内カウンセラー」が設置されていることも。
「お金がない」と諦めずに、まずは無料の相談窓口を探してみましょう。
低料金カウンセリングを利用する
私設のカウンセリングルームでは、1回5,000円~10,000円前後がカウンセリング料金の相場となっています。
しかし、
- 大学附属の相談室
- オンラインカウンセリング
- グループカウンセリング
であれば、1回の費用を2,000円~3,000円程度に抑えることが可能です。
【解決】カウンセリングを受けたいけどお金がない場合の対処法では、お金の負担を軽減できるカウンセリングの方法の特徴やメリット・デメリットを解説しています。自分に合ったカウンセリング選びにぜひお役立てください。
まとめ
この記事では、多くのカウンセリングが保険適用外である理由とカウンセリングが保険適用されるための条件、保険適用されないカウンセリング費用を抑える方法について解説しました。
多くのカウンセリングが保険適用外になってしまうのは、
- カウンセリングでは「同じ内容」で「同じ効果」を得るのは難しいから
- カウンセラーとクライエントの両者で取り組むから
の2つが大きな理由となっています。
ただし、
- 医師による通院・在宅精神療法
- 医師による標準型精神分析療法
- 医師や看護師による認知療法・認知行動療法
- 医師と公認心理師による小児特定疾患カウンセリング
- 通院集団精神療法や依存症集団療法といったグループカウンセリング
であれば、保険が適用されます。
また、保険適用されない場合でも、無料や低料金でのカウンセリングを上手に活用すればカウンセリング費用を抑えることができます。