「カウンセリングを受けてみようかな」と検索した時に、関連キーワードに「意味ない」という言葉が現れて「えっ?カウンセリングって意味ないの?」と困惑していませんか?
実際にはカウンセリングの効果は多くの研究で証明されています。
しかし、「カウンセリングなんて意味がない!」と感じてしまう人がいるのも事実なのです。
この記事では、
- カウンセリングは意味がないのか
- カウンセリングに意味がないと感じる理由
- カウンセリングに意味がないと感じた時の対処法
の3つについて、実際にカウンセリングを提供している専門家が詳しくお話しします。
カウンセリングは意味ないの?
カウンセリングの有効性を示す研究は多い
「カウンセリングに意味があるのか?」については、これまでたくさんの研究が行われてきました。
例えば、石川(2015)*1によると、2013年7月~2014年6月に発表された、様々な症状に対するカウンセリングの実践と治療効果に関する研究は、その多くが「カウンセリングによって症状が改善した」いう結果を報告していることが分かります。
また、特定の疾患に効果的なカウンセリングの技法も発見されています。
例えば、アメリが心理学会(APA)では、厳しい基準をクリアした「十分に確立された治療法」として、表1のような18種類の方法を挙げています。
表1 APAによる十分に確立された治療法(丹野(2001)より*2)

このように、カウンセリングには「意味がある」ということは、明確な根拠をもって示されているのです。
薬物治療とカウンセリングの併用で治療効果が高まる
「薬物療法」と「カウンセリング」の併用が治療効果を高めることもよく知られています。
例えば、日本うつ病学会による「うつ病学会治療ガイドライン」*3によると、軽症~重症のうつ病に対する基礎的な介入として「支持的精神療法と心理教育」が挙げられています。
支持的心理療法とは、治療者が患者さんの訴えるしんどさや苦しみに耳を傾け、時には共感し、時に問題を整理していくカウンセリングのこと。
また、心理教育とは、患者さんやご家族に対し、病気の正しい知識や対処法を伝えることを指します。
うつ病学会治療ガイドラインでは、これらの介入を基本としつつ、必要に応じた薬物の併用が治療効果を高めるとして推奨されています。
「カウンセリングなんて意味ない!」と感じる理由
ここまで、「カウンセリングには意味がある」ということをご紹介してきました。
それでも、「カウンセリングなんて意味ない!」と感じてしまうことはあります。
ここからは、その理由について解説していきます。
自分の意思で受けていない
カウンセリングに意味を感じられない理由の1つが「自分の意思ではない」ということ。
周りの人に言われて仕方なく受けているカウンセリングでは、そもそも「こんなことしても意味がない」とネガティブな気持ちになります。
また、自分の悩みや素直な気持ちを話すことにも抵抗感を抱くでしょう。
その結果、カウンセラーも効果的なカウンセリングを行えなくなってしまいます。
他人を信じるのが怖い
カウンセリングに来る方の中には、カウンセラーを頼りたい反面、「もし、カウンセラーを信じて裏切られたら立ち直れない」と感じ、完全に信頼できない人もいます。
そのため、カウンセラーの前では緊張して話せなくなってしまったり、本当はしんどいのに「おかげで元気になりました」と取り繕ったりして、なかなか素直な気持ちを出せず、「カウンセリング来たけど意味がない」という不満感を募らせてしまいます。
自分ではなく他者を変えようとしている
ときどき、「夫にもっと家事をしてほしい」など、自分ではなく他者を変えるためにカウンセリングに来る方がいます。
しかし、カウンセリングで出来るのは「自分」を変えることだけ。
自分を変えることで、他者との関係性が変わり、結果として他者が変わってくれることはあります。
でも、「私は悪くないんだから、何も変わるつもりはない」という人にとっては、カウンセリングは無意味なものになってしまうでしょう。
カウンセラーが問題解決してくれることを期待している
カウンセリングは、あなた自身が悩みや問題に対して自分なりに解決策を見出していくサポートをするものです。
そのため、「カウンセラーが代わりに解決してくれるだろう」という期待を持って相談に来た方は、「カウンセラーは話を聴くばっかりで何もしてくれない!こんなの意味がない!」と感じてしまいます。
自分を見つめるのがしんどくて「悪化した」と思う
「カウンセリングは心が癒されるもの」というイメージを持つ人もいますが、実際には、これまで見ないようにしてきた感情と向き合わなければならない厳しい側面を持つものです。
私たちには、自分の心を守るための「防衛機制」という働きがあります。
例えば、
- 解離:不快感情を避けるために自分の意識・記憶・人格の一部を切り離してしまうこと
- 行動化:不快感情を抱えないためにアルコールや薬物への依存、拒食/過食などの「行動」でかき消してしまうこと
などが挙げられます。
これらの方法は一時的に不快感情から目を逸らすことはできますが、根本的な解決にはなっていないため、しばらくすると不快感情は戻ってきてしまいます。
また、不快感情から目を逸らす方法そのものが「解離性障害」「依存症」「摂食障害」など、さらに自分を苦しめる疾患になってしまうこともあるのです。
このような苦しみから解放されるには、「自分がここまで恐れ、逃げている不快感情とは何なのか」を知る必要があります。
そして、カウンセリングでは、カウンセラーと一緒にその不快感情に向き合っていきます。
それは、やはり非常に苦しいことです。
そのため、「カウンセリングに来たら悪くなった」と思う人もいるのです。
カウンセリングは意味ないと感じた時の対処法
カウンセラーに素直な気持ちを話す
「カウンセリングなんて意味がない!」と感じたら、その気持ちをカウンセラーに伝えてみましょう。
悩みを抱える方の多くは、自分の気持ちを素直に感じたり、表現したりすることが苦手です。
それでも、勇気を出して「カウンセリングなんて意味がない」と言えたなら、それだけで「自分の気持ちを言えた」という成功体験を積むことになります。
また、しっかりと学んできたカウンセラーであれば、その発言に至るまでの葛藤と勇気を理解し、受け止めた上で、カウンセリングをより良いものにできるよう、一緒に考えてくれるでしょう。
どうしても相性が合わない場合には別のカウンセラーを探すのもOK
カウンセラーも人間ですから、どうしても相性が合わないということもあります。
特に、人の心には、第一印象で「嫌だ」と思ってしまうと、その後はどんどん嫌いになるという「単純接触効果」が働いています。
そのため、初対面で「このカウンセラーは信用できない」と思ってしまうと、心を開いて話すことは難しくなるでしょう。
その場合には、別のカウンセラーを探すのも1つの方法です。
なお、単純接触効果は「好きだ」と感じた人や物に対しては、接するたびに好感度が高まるプラスの効果も持っています。
単純接触効果について詳しく知りたい方は【簡単】人間関係に役立つ心理学のテクニック【明日から使える】をご覧ください。
まとめ
この記事では、カウンセリングには意味ないのかを解説すると共に、カウンセリングに意味がないと感じる理由と対処法についてご紹介しました。
カウンセリングの有効性を示す研究は多く、薬物療法とカウンセリングの併用で治療効果が高まることも知られており、カウンセリングには「意味がある」と言えます。
それでも「カウンセリングなんて意味ない!」と感じる理由としては、
- 自分の意思で受けていない
- 他人を信じるのが怖い
- 自分ではなく他人を変えようとしている
- カウンセラーが解決してくれることを期待している
- 自分を見つめるのがしんどくて「悪化した」と思う
という5つが挙げられるでしょう。
また、カウンセリングは意味がないと感じた時には、
- カウンセラーに素直な気持ちを話す
- どうしても相性が合わない場合には別のカウンセラーを探す
という2つの対処法がありますので、ぜひ試してみてください。
参考文献 *1 石川健介(2015)臨床心理学における研究の動向と今後の課題-実証的な研究をめざし て- 教育心理学年報 54 pp84-101. *2 丹野義彦(2001)実証に基づく臨床心理学に向けて 教育心理学年報 40 pp157-168. *3 日本うつ病学会気分障害の治療ガイドライン作成委員会(2016)日本うつ病学会治療ガ イドライン Ⅱ.うつ病(DSM-5)/大うつ病性障害