「悩みを解消したい」「話を聴いてほしい」
そんな想いから勇気を持ってカウンセリングの扉を叩いたのに、いざ受けてみると「効果が感じられない」と思ったことはありませんか?
「このカウンセラーにスキルがないから」と全てカウンセラーのせいにしたくなってしまいますが、実は「効果がない」と感じてしまう背景にはカウンセラーだけでなくクライエント(相談者)に原因があることも。
そこで今回は、カウンセリングに効果がないと感じる原因について詳しく解説します。
また、効果がないと感じたときの解決法も具体的にご説明しますので、「このままでいいんだろうか…」と悩んでいる方はぜひチェックしてみてください。
カウンセリングに効果がないと感じる原因
カウンセラーを信頼できない
カウンセリングでは、まずカウンセラーとクライエントがお互いに信頼し合った状態である「ラポール」を形成することから始めます。
信頼できない相手に、誰にも話せなかった悩みなんて話せないからです。
しかし、
- 若くて経験が浅そうに見える
- 否定や叱責を繰り返してくる
- 社会人として不適切な身だしなみや言葉遣いが目立つ
といったカウンセラーに出会うと、クライエントは「大丈夫かなぁ」という不安感や「この人は信頼できない」という反発心を覚えます。
そんな状態ではクライエントは本心を話せませんし、カウンセラーの言葉も素直に受け取れません。
当然、カウンセリングの効果も感じられずに終わってしまいます。
カウンセラーが十分に話を聴いてくれない
カウンセリングは、クライエントがカウンセラーに対して話をしながら内省し、自分らしい生き方を見つけ、問題解決に取り組むサポートをする営みです。
そのため、カウンセラーがあまり話を聴いてくれないとカウンセリングの効果が出にくくなってしまいます。
長岡ら(2009)*1は、カウンセラーとクライエントの関係性が十分に深まらず表層的な語りに留まってしまう「低評価カウンセリング」と、両者の関係性が十分に深く語りが非常に内省的になった「高評価カウンセリング」を分類し、どのような応答が行われているかを比較しました。
その結果、高評価カウンセリングではクライエントが話す時間と沈黙が対話全体のうち約8割を占めており、低評価カウンセリングと比べて顕著に高い割合となっていることが明らかになりました。
また、クライエントからの質問にカウンセラーが答える形ではなく、あいづちでクライエントから話を引き出すスタイルが多いことも示されました。
逆に言えば、
- カウンセラーがクライエントの話を深めようとしない
- カウンセラーが表面的な理解で意見や助言を繰り返す
- カウンセラーが質問ばかりしてクライエントのペースで話せない
といったカウンセリングでは、効果が薄くなると考えられます。
カウンセリングの方法がニーズと合っていない
実はカウンセリングにはたくさんの種類があり、代表的なものは以下の通りです。
■来談者中心療法
一般的によくイメージされる、カウンセラーがクライエントの話をじっくり聴く方法で、クライアントが本来持っている解決能力を引き出すことを目指します。
■認知行動療法
出来事や状況に対してクライエントが持つ適応的ではない認知(≒考え方)に働きかけ、適応的なものに修正することで行動の変容を目指します。
■精神分析・精神分析的心理療法
無意識に抑圧された空想や感情を意識化することで、生きづらさの解消を目指します。
「ただ、じっくり話を聴いてほしい」と思っているのに、行動の変容を目指す認知行動療法によるカウンセリングを受けると「なんだか違うかも」と違和感を覚えるかもしれません。
求めている効果を得るためには、自分のニーズに合ったカウンセリングを選ぶことが重要です。
カウンセリングの種類についてはカウンセリングの種類を心理学の専門家が解説【形態・療法別】にまとめています。
また、日本臨床心理士会「臨床心理士と出会うには」でも、臨床心理士が面接で行う療法がまとめられていますので参考にしてみてください。
自分の意思で受けていない
自分で「カウンセリングを受けたい」と思ったのではなく、上司や家族から「カウンセリングを受なさい」と言われて渋々やって来たクライエントの場合、本人に「解決したい」「変わりたい」という動機がありません。
むしろ、無理やりカウンセリングを受けさせた人たちに「カウンセリングなんて意味がないと分からせてやる!」と考え、カウンセラーに対して沈黙を貫いたり、否定したり、嘘をついたりする人もいます。
こうなると、カウンセリングで効果を得ることは難しくなってしまいます。
カウンセリングよりも治療が必要な状態
カウンセリングは「癒される」というイメージがありますが、実際にはこれまで目を背けてきた「忘れたいようなつらい過去」や「自分の弱さやみじめさ」などを思い出さねばならず、苦しさを感じることも少なくありません。
そのため、心が弱っている人は「カウンセリングを受けたら、かえって状態が悪化した」と感じることも。
心が弱っているサインとしては、以下のようなものが挙げられます。
【心のサイン】
□ずっと気分が沈んで憂鬱
□ソワソワと落ち着かない
□何に対しても意欲が持てない
□悪口を言われている気がする
□誰もいないのに人の声がする
□ドアや窓のカギを何度も確認しないと不安
【身体のサイン】
□不眠が続いている
□思考がまとまらない
□食欲がコントロールできない
□食べ物の味を感じられない
□頭痛や吐き気などの症状が酷い
このような方は、カウンセリングよりも医療機関による治療を優先しましょう。
カウンセリングの効果がないと感じたときの解決方法
カウンセラーと効果を感じないことを話し合う
「カウンセリングに効果が感じられない」と思ったら、ぜひそのままカウンセラーに伝えてみましょう。
本当にクライエントに寄り添えるカウンセラーなら、クライエントが黙ってカウンセリングを去ることなく、わざわざ「効果を感じられない」と伝えてくれた勇気に感謝するでしょう。
そして、「なぜ効果が感じられないのか」について共に考え、クライエントにとって良いカウンセリングとなるよう尽力してくれるはずです。
自分がカウンセリングに求めているものを見つめ直す
カウンセリングでは、クライエントが主役です。
そのため、クライエントの中で「こうしたい」という考えがまとまっていないと、カウンセリングで進むべき方向が定まらず、なかなか効果も得られません。
カウンセリングに求めることは人それぞれ。
「ただ話を聴いてほしい」という人もいれば、「問題や症状をとにかく解決したい」という人もいます。
自分がカウンセリングにどんな期待を持っているかを整理し、カウンセラーに伝えてみましょう。
カウンセラーは、あなたのニーズを聴いた上で「ここではあなたのニーズを満たすために〇〇な部分をサポートできる」「ここではなく××という機関の方が適している」など教えてくれるでしょう。
まとめ
この記事では、カウンセリングに効果がないと感じる原因と解決方法について解決しました。
カウンセリングに効果がないと感じる原因としては、
- カウンセラーを信頼できない
- カウンセラーが十分に話を聴いてくれない
- カウンセリングの方法がニーズと合っていない
- 自分の意思で受けていない
- カウンセリングよりも治療が必要な状態
などが考えられます。
また、「カウンセリングなんて効果がない」と感じたときには、
- カウンセラーと効果を感じないことを話し合う
- 自分がカウンセリングに求めているものを見つめ直す
といった方法を試してみましょう。
今回はカウンセリングで効果がないと感じた場合についてご紹介しました。
逆に「効果があったと思えるのはどんな時なの?」と気になる方は、【本質】カウンセリングの効果とは何なのか心理学の専門家が解説、【本質】カウンセリングは意味ない?心理学の専門家がお答えしますにカウンセリングの持つ効果や意味をまとめていますので、ぜひあわせてお読みください。
参考文献 *1 長岡千賀・小森正嗣(2009)心理面接におけるカウンセラーの応答:話者交替時のカウ ンセラーの発話冒頭を指標とした事例研究 Cognitive Studies 16(1)pp24-38.