世の中にはたくさんのカウンセリング機関があります。
「どのカウンセラーに頼もうかな?」と迷っている時に、カウンセラーの資格や経歴をチェックする人も多いのではないでしょうか。
しかし、カウンセリングの資格は非常にたくさんあり、調べれば調べるほど「結局どの資格を持っているカウンセラーなら安心なの?」と、かえって困惑してしまうことも。
そこで、この記事では代表的なカウンセリング資格をご紹介します。
また、「公認心理師」と「臨床心理士」は他のカウンセリング資格と一線を画しています。
その理由についてもあわせて解説しますので、ぜひご覧ください。
カウンセリングの代表的な資格
公認心理師
カウンセリングに関する日本で初めての国家資格が「公認心理師」です。
2017年9月15日に施行された公認心理師法に基づき、2018年に実施された第1回試験では28,574名の公認心理師が誕生しました。
また、2019年の第2回試験では7,864名が合格し、教育・医療・福祉・司法・労働といった幅広い分野で活躍しています。
厚生労働省のHPでは、公認心理師の仕事内容について次のように書かれています。
(1)心理に関する支援を要する者の心理状態の観察、その結果の分析
(2)心理に関する支援を要する者に対する、その心理に関する相談及び助言、指導その他の援助
(3)心理に関する支援を要する者の関係者に対する相談及び助言、指導その他の援助
(4)心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供
厚生労働省「公認心理師」
(1)~(3)は、私たちが「カウンセリング」としてイメージしやすい仕事です。
悩んでいる本人の心の状態を観察し、悩みを引き起こしている要因を分析します。
また、本人からの相談に対応するだけでなく、家族をはじめとする関係者の話を聴く、助言や指導を行うなどして、みんなで本人を支え続けらえるようサポートします。
(4)は、個人だけでなく地域社会を対象として、より多くの人が心の健康を維持・向上できるよう正しい情報を発信していくことが求められています。
公認心理師の認定方法については「カウンセリング資格の中で公認心理師と臨床心理士が特別である理由」の章で解説します。
臨床心理士
臨床心理士とは、日本臨床心理士資格認定協会が認定する民間資格です。
同協会では臨床心理士を「臨床心理学にもとづく知識や技術を用いて、人間の“こころ”の問題にアプローチする“心の専門家”」と定義しています。
1988年に誕生した臨床心理士は、現在では約4万人に達し、公認心理師と同様に様々な分野での心理的援助に取り組んできた実績があります。
日本臨床心理士資格認定協会では、臨床心理士の仕事内容を次のように示しています。
(1)臨床心理査定:人の特徴や問題を心理テストや観察を通じて明らかにし、適切な援助方法を検討します。
(2)臨床心理面接:臨床心理士が様々なカウンセリング技法を用いて、相談に来た方の心を支援する活動です。
(3)臨床心理的地域援助:特定の個人だけでなく、地域社会や学校・企業などのコミュニティを対象として、メンタルヘルス向上や被害支援のための情報提供や環境調整を行います。
(4)調査研究:(1)~(3)の活動で用いる技術や知識を確実なものにするために、調査や研究に取り組みます。
日本臨床心理士資格認定協会「臨床心理士の専門業務」
臨床心理士の認定方法については、「カウンセリング資格の中で公認心理師と臨床心理士が特別である理由」の章で解説します。
産業カウンセラー
産業カウンセラーは、日本産業カウンセラー協会が認定する民間資格です。
企業やハローワークなどに所属し、働く人と組織の課題解決を支援することを目指した活動に取り組みます。
産業カウンセラーの仕事内容は、次の3つです。
(1)メンタルヘルス対策への支援:働く人々のメンタル不調予防や危機介入などを目的とした研修やカウンセリングを行います。
(2)キャリア形成の支援:1人1人の意識や働き方に合わせたキャリア形成を支援する教育・カウンセリングの機会を提供します。
(3)職場における人間関係開発・職場環境改善への支援:働きがいのある職場や働きやすい職場をつくるための研修や提案を行います。
日本産業カウンセラー協会「協会について」
産業カウンセラーは、受験資格を持つ人が資格試験に合格することで取得できます。
受験資格は、以下のいずれかに該当する場合となります。
(1)20歳以上で、日本産業カウンセラー協会や委託先が提供する講座を修了した者
(2)大学院研究科で心理学やその隣接領域、人間科学、人間関係学のいずれかの専攻を修了し、指定された単位を取得している者
(3)社会人として週3日以上勤務した経験を通算3年以上有し、大学院研究科で心理学やその隣接領域、人間科学、人間関係学のいずれかの専攻を修了し、指定された単位を取得している者
認定心理士
認定心理士は、日本心理学会が認定する民間資格です。
同学会では、認定心理士を“心理学の専門家として仕事をするために必要な,最小限の標準的基礎学力と技能を修得している,と日本心理学会が認定した人”と定めています。
独自の資格試験はなく、次の3つの条件を満たすことで認定されています。
(1)四年制大学を卒業し学士の学位を取得、もしくは大学院修士課程を修了し修士の学位を取得
(2)16歳以降、通算2年以上日本に滞在した経験を有していること
(3)認定心理士認定資格細則が指定する心理学関係の所定の単位を取得
日本心理学会「資格申請の手引き 2014年度改訂版」
この資格だけで専門性を示すことは難しいため、カウンセラーとして活躍するには他の資格も取得していることや実務経験があることが求められるでしょう。
その他にもカウンセリング資格は多数
これまで紹介してきたもの以外にも、
■メンタルケア心理士(R)
- 認定団体:メンタルケア学術学会、生涯学習開発財団、ヘルスケア産業推進団体
- 認定方法:こころ検定2級試験に合格し、資格登録を行う
■認定カウンセラー
- 認定団体:日本カウンセリング学会
- 認定方法:日本カウンセリング学会に一定期間在籍し、養成カリキュラムを受講する、もしくは日本カウンセリング学会の会員であり、優れた業績やカウンセラーとして一定以上の実務経験があること
■メンタルケアカウンセラー(R)
- 認定団体:日本メディカル心理セラピー協会
- 認定方法:メンタルケアカウンセラー資格試験に合格する
など、カウンセリング資格は多数存在しています。
カウンセリング資格の中で公認心理師と臨床心理士が特別である理由
カウンセリング資格の中でも、公認心理師と臨床心理士は特に高い専門性を持つと考えられます。
その理由としては、どちらの資格も受験資格を得るために大学院修了程度の専門知識や技術が求められているからです。
■公認心理師の受験資格
公認心理師を受験するためには、以下の3つのどれかを満たす必要があります。
区分A:四年制大学で指定された科目を履修 → 大学院で指定された科目を履修
区分B:四年制大学で指定された科目を履修 → 特定の施設で2年以上の実務経験
区分C:外国の大学卒業および外国の大学院を修了するなどして、区分Aや区分Bと同等以上の知識や技能を有する者と認定されること
ただし、これら以外にもすでに心理系の大学院を修了していたり心理職としての実務経験を持つ人が、大学や大学院に通い直さなくても公認心理師の受験資格を取得できるよう、「特例措置」が用意されています。
そのため、現時点では以下に挙げた条件を満たして公認心理師を取得している人が大多数を占めています。
【特例措置】
区分D:公認心理師法が施行される2017年9月15日以前に大学院に入学して指定された科目を履修、あるいは履修中
区分E:公認心理師法施行前に四年制大学で指定された科目を履修 → 施行後に大学院で指定された科目を履修
区分F:公認心理師法施行前に四年制大学で指定された科目を履修 → 施行後に特定の施設で2年以上の実務経験
区分G:5年間の実務経験 → 現任者講習の受講(※2022年9月14日まで)
■臨床心理士の受験資格
臨床心理士の受験資格は、主に以下の5つです。
- 第1種指定大学院を修了
- 第2種指定大学院を修了し、1年以上の実務経験
- 臨床心理士養成に関する専門職大学院を修了
- 諸外国で指定大学院と同等以上の教育歴があり、修了後に日本で2年以上の実務経験
- 医師免許を取得後、心理臨床の実務経験が2年以上
他のカウンセリング資格は、講座・カリキュラムの受講や試験合格だけで取得できるのに対し、公認心理師と臨床心理士は受験資格を得るまでにも長く険しい道のりがあるのです。
難易度の高い試験に合格する必要がある
公認心理師と臨床心理士は、受験資格を得るのも大変ですが、資格試験の内容も決して簡単ではありません。
直近の資格試験の合格率は、
- 公認心理師は46.4%(第2回公認心理師試験)
- 臨床心理士は62.7%(令和元年度臨床心理士資格試験)
となっています。
このような厳しい試験に合格できるよう学び続けているからこそ、公認心理師と臨床心理士は正しい知識に裏付けられた心理的援助を提供できるのです。
まとめ
この記事では、以下のようなカウンセリング資格をご紹介しました。
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 産業カウンセラー
- 認定心理士
これら以外にもたくさんの資格があります。
信頼できるカウンセラーを探すなら、公認心理師と臨床心理士の資格を持ったカウンセラーがおすすめです。
その理由としては、公認心理師も臨床心理士も資格取得には、
- 大学院修了程度の専門知識や技術
- 難易度の高い試験の合格
といった厳しい条件が課せられており、資格取得者は心の専門家としての最低限のスキルを習得していると考えられるからです。
自分に合ったカウンセリングを探す際には、資格だけでなく種類にも注意する必要があります。
カウンセリングの種類についてはカウンセリングの種類を心理学の専門家が解説【形態・療法別】にまとめていますので、こちらもあわせてお読みください。