「カウンセリングを受けよう!」と思って検索してみると、「どうもカウンセリングには色々な種類があるようだ」ということに気づきます。
自分に合ったカウンセリングを選ぶためには、カウンセリングの種類やその内容について知識を持ち、比較していく必要があります。
そこで、この記事では、
- カウンセリングの形態
- カウンセリングで用いられる療法
の種類について分かりやすく解説します。
「はじめてのカウンセリング選びで失敗したくない!」という方は、ぜひ記事をご覧ください。
カウンセリング形態の種類とは?
1対1でのカウンセリング
カウンセリングと聞いて、多くの人がイメージするのは1つの部屋でカウンセラーとクライエント(相談者)が対面して話すものではないでしょうか。
実は、それ以外にも
- クライエントがカウチ(寝椅子)に横になって話すカウンセリング
- ビデオチャットや電話で話すカウンセリング
- メールやSNSなど「文章」によるカウンセリング
など、様々なスタイルでカウンセリングは実施されています。
1対1のカウンセリングのメリット・デメリットを表1にまとめました。

カウンセラーには守秘義務がありますので、1対1のカウンセリングで話した秘密が外に漏れることはありません。
また、自分のペースでゆっくり話すこともできます。
一方で、相性やスキルといった面で自分に合わないカウンセラーに当たってしまうこともありますし、カウンセリングは1回5,000円~10,000円前後で料金設定されており、お金の面で負担が大きいといったデメリットもあります。
グループでのカウンセリング
カウンセリングは1対1で行われるものばかりではありません。
同じ悩みを抱えたクライエントが集まって行う「グループカウンセリング」もあります。
「個別に対応できない分、カウンセリングの効果が薄まるのでは?」と思われがちですが、同じ活動でも個別より集団の方が、悩みや問題の改善に高い効果を発揮するという研究結果が報告されています。
例えば、小橋ら(2012)*1の研究では、個別での運動に比べ、集団で運動をした方が充実感や満足感、集中力が高まることが明らかになっています。
また、吉村ら(2013)*2は、肥満に対する減量支援では“集団型指導は個別型指導と同等もしくはそれ以上の減量効果を有している”と述べています。
集団での取り組みは、個々人の悩みや問題を改善する後押しとなるのです。
グループでのカウンセリングのメリット・デメリットを表2にまとめました。

グループカウンセリングでは、1人では逃げ出したくなるような状況でも「同じ悩みを持った仲間がいる」ということが支えとなり、前向きに解決へと取り組めるメリットがあります。
また、グループカウンセリングは1回1,000円~3,000円が相場となっており、1対1のカウンセリングよりも低料金で受けられることも魅力です。
一方、1人ではないからこそ、他者に不安や劣等感を抱いている人は「こんなことを話すとバカにされるのではないか」などと考え、自分の気持ちを素直に話せなくなることがあります。
また、「自分だけが置いていかれるのは嫌だ」と考え、本当は改善していないのに、他者に合わせて「分かったフリ」「良くなったフリ」をしてしまう人もいます。
カウンセリングで用いられる療法の種類とは?
精神分析・精神分析的心理療法
精神分析とは、フロイト(Freud,S.)が創始した心理療法で、無意識に抑圧された空想や感情を意識化することで、生きづらさの解消を目指すものです。
カウンセリングと聞くと、悩んでいることを相談するイメージがありますが、精神分析では思い浮かんだことを自由に話す「自由連想」が求められます。
自由に語られる内容から無意識に抑圧されたものに気づくことで、自分なりの対処ができるようになるのです。
また、精神分析は、
- 1回45分~50分
- クライエントはカウチ(寝椅子)に横になって話す
- 週4日以上の頻度で行う
といった設定で行われます。
しかし、現代の日本では仕事などもありますから、週4日も精神分析に時間を割ける人はそう多くありません。
そのため、週1回~3回の「精神分析的心理療法」が用いられるケースが多く見られます。
精神分析的心理療法では、カウチを使う場合もあれば、他のカウンセリングと同様にカウンセラーとクライエントが対面して行う場合もあります。
松本(2016)*3は、“精神分析は「そのひとの現実を見つめ苦痛に持ちこたえる力を高める」こと”を目指すと述べています。
つまり、精神分析を受けることで、自分自身を理解すると共に、今の苦痛だけでなくこれからの人生の苦痛に対しても自分なりに受け止め生き抜いていく力を育むことができるのです。
しかし、精神分析を終えるまでには長い年月が必要です。
そのため、「症状を今すぐになくしたい」という人には向かない療法だと言えるでしょう。
認知行動療法
認知行動療法は、出来事や状況に対してクライエントが持つ適応的ではない認知(≒考え方)に働きかけ、適応的なものに修正することで行動の変容を目指すものです。
例えば、「イライラしている人がいる」という出来事に対して、異なる認知を持つAさんとBさんがどのような行動をを取るかを図1にまとめてみました。

左のAさんはイライラしている人を見て「そっとしておこう」という認知を持つだけで、あまり気にせずマイペースに過ごしています。
一方、右のBさんはイライラしている人を見て「私のせいかも」と不安になり、イライラしている人の顔色を見ながら苦しい時間を過ごすことになってしまうのです。
このBさんのような苦痛を感じやすい認知を修正し、もっと生きやすくするサポートを行うのが認知行動療法です。
今悩んでいることを整理し、「〇〇に取り組んでみましょう」と具体的に提案してもらえるため、「悩みの解決に向けて、何をすればいいかはっきり教えてほしい」という方にはおすすめです。
また、うつ病の認知療法・認知行動療法治療者用マニュアル*4によると、認知行動療法の面接は、
- 1回30分以上
- 原則として16回~20回程度(必要に応じてフォローアップ面接)
とされており、比較的短期間で終えられるのもメリットと言えるでしょう。
一方、認知行動療法では「ホームワーク」が課され、カウンセリング以外の時間でも、クライエント本人が問題に主体的に取り組んでいく必要があります。
「カウンセリングさえ受けていれば大丈夫でしょ」と受け身な人には不向きです。
来談者中心療法
来談者中心療法は、ロジャーズ(Rogers,C.R.)によって創始された心理療法で、パーソンセンタードアプローチ(PCA)とも呼ばれます。
ロジャーズは、「何が問題か」や「どの方向に行くべきか」といったことはクライエントだけが知っていると考えました。
そして、クライエントが本来持っている解決能力を引き出すためのカウンセラーの3条件を示しました。
それが以下の3つです。
自己一致:自分自身にも嘘をつかず、ありのままでいること
受容:クライエントを良い/悪いで判断せず、そのまま受け入れること
共感的理解:クライエントが体験する感情・感覚・意味などを自分自身のことのように知覚すること
自分の考えを整理したい人、自分らしい生き方を見つけたい人に適していますが、「問題を解決してほしい」と思って相談に行くと「役に立たない」という不満感を抱く結果となってしまいます。
まとめ
この記事では、カウンセリングの形態と療法について解説しました。
カウンセリングの形態としては、
- 1対1でのカウンセリング
- グループでのカウンセリング
の2つに大別することができます。
また、カウンセリングで用いられる代表的な療法である、
- 精神分析・精神分析的心理療法
- 認知行動療法
- 来談者中心療法
の3つについて解説しました。
それぞれのメリット・デメリットも合わせて紹介していますので、自分に合ったカウンセリングを見つける参考にしてみてください。
参考文献 *1 小橋康昌・佐山絵梨・河辺信秀(2012)個別運動と集団運動が運動時の心理状態に与え る影響-フロー理論に基づく心理状態の評価- 理学療法学 39 p949. *4 うつ病の認知療法・認知行動療法治療者用マニュアル 厚生労働科学研究費補助金ここ ろの健康科学研究事業「精神療法の実施方法と有効性に関する研究」
引用文献 *2 吉村英一・難波秀行・松田拓朗・北村実穂子(2013)集団型指導と個別型指導による減 量支援の効果の比較 健康支援 15(2) pp1-6. *3 松木邦裕(2016)こころに出会う 臨床精神分析 その学びと学び方 創元社