【理論】性格の特性論を心理学の専門家が分かりやすく解説

【理論】性格の特性論を心理学の専門家が分かりやすく解説

心理学の世界には、人の性格を理解するための2つの考え方があります。

そのうちの1つが性格をタイプ分けして理解しようとする「性格類型論」です。

性格類型論については下の記事で詳しく説明しています。

そして、もう1つが「性格特性論」と呼ばれるもの。

性格類型論が「Aさんは真面目タイプ」と言い切るのに対して、「Aさんは真面目だけど、ひょうきんな面もあって…」と色々な特徴(特性)を並べることで、その人の性格を描き出そうとします。

今回は性格特性論の特徴や代表的な理論を公認心理師・臨床心理士が分かりやすく解説します。

また、自分の性格特性を知る方法もご紹介しますので、興味のある方はぜひ試してみてください。

性格特性論とは?

性格特性論の特徴

性格特性論は「明るい」「真面目」「神経質」などの特性をどの程度持っているか数値化することで、その人の性格を表現しようとする考え方です。

例えば、3教科の合計が150点の人でも、その内訳が「国語100点、数学25点、英語25点」の人と、「国語50点、数学50点、英語50点」の人とでは、得意科目や能力が異なるのはイメージしやすいですよね。

これと同じように、「明るい」「真面目」という特性を持っていても、明るい10%・真面目90%の人と、明るい90%・真面目10%の人とでは、全く違った性格となるのです。

性格特性論は数値化できるため、個人差の比較がしやすいのがメリットですが、「結局、その人はどんな人なのか」という全体像をつかみにくいデメリットもあります。

性格特性論を代表する理論

オールポートの特性論

「特性」という言葉を最初に用いたのは、アメリカの心理学者であるオールポート(Allport,G.W.)です。

オールポートは「重要な特性は必ず言語として表現される」という仮説(語彙仮設)に基づき、辞書に載っている単語の中から、「明るい」「真面目な」など性格を表現する単語を約18,000個もピックアップしました。

そして、その中で類似・重複のある言葉を排除することで最終的には約4,500個を抽出しました。

これが特性論の起源となります。

また、オールポートは特性を以下の「個人特性」と「共通特性」の2つに分類しました。

  • 個人特性:他者と比較できない、その個人だけに特徴的な特性
  • 共通特性:多くの人に共通しており、他者と比較できる特性

そして、他者との比較は共通特性で行うべきだと考え、14の共通特性を測定することで、性格プロフィールを描ける「心誌(Psychograph)」を作成しました。

キャッテルの特性論

オールポートの考えを受けて独自の特性論を考案したのが、アメリカの心理学者キャッテル(Cattel,R.B.)です。

キャッテルはオールポートと同様に、個人特有の特性を「独自特性」、多くの人に共通している特性を「共通特性」と分類しています。

また、「独自特性」は表層と深層で構成されていると考え、表層の特性を「表面特性」、深層の特性を「根源特性」と名付けました。

キャッテルの根源特性と表面特性

上の図1のように、根源特性は表面特性の根底にあって、表面特性に影響を与えます。

しかし、根源特性を直接確認することはできません。

そこで、キャッテルは因子分析によって、潜在的な根源特性の抽出を試みました。

その結果、いくつかの根源特性を見出しました。

また、そのうち16因子を測定できる質問紙として、16パーソナリティ因子質問紙(16PF)が作成されています。

この根源特性という発想は、性格の根底にある「気質」という考え方にも通じています。

気質についてまとめた下の記事を読むと、根源特性の考え方がより分かりやすくなります。

アイゼンクの特性論

イギリスのアイゼンク(Eysenck,H.J.)は、特性論と類型論の統合を目指した心理学者です。

アイゼンクは性格を以下の図2のように、4階層に分類しました。

アイゼンクの性格特性論の4階層のイメージ図

最も下位にあるのが個人特有の行動傾向を示す「個別的反応」の次元です。

その上位にある「習慣反応」の次元は、さまざまな状況で個別的反応が繰り返され、習慣化したものを指します。

そして、いくつかの類似した習慣反応がまとまると「特性」の次元になり、その特性を因子分析して抽出された「外向ー内向」「神経症傾向」「精神病的傾向」の3つを最高次の「類型」の次元と位置づけました。

のちにアイゼンクは、この理論をもとにモーズレイ人格目録(MPI)という性格検査を考案しています。

ゴールドバーグが提唱したビッグファイブ理論

性格特性論の中でも、特に有名なのがアメリカの心理学者ゴールドバーグ(Goldberg,L.R.)によって提唱された「ビッグファイブ理論」です。

これは、開放性・誠実性・外向性・協調性・神経症傾向の5つの因子を数値化することで過不足なく人の性格を表現できるという理論です。

それぞれの要素の意味と、数値の高い人、低い人の特徴を下の表1にまとめました。

ビッグファイブの5因子とその特徴

自分の性格を知るには?

「自分の性格特性を知りたい!」という方は、ぜひ次の2つの方法を試してみてください。

性格診断サイトを参考にする

インターネット上には性格特性論の考え方に基づいた性格診断サイトがあります。

どれも科学的なエビデンスが証明されているわけではありませんが、自分の性格特性を知る1つの手がかりとして活用できます。

適職診断NAVI

「適職診断NAVI」はその名の通り、自分に適した仕事や働き方を見つけることを目的とした性格診断サイトです。

適職診断NAVI

全35問に回答すると、「マッチする職種」「キャリア志向性」「パーソナリティ」「思考スタイル」の4項目の診断結果が提示されます。

仕事だけでなく、性格や思考など自分自身の理解を深めるのに役立つ性格診断テストとなっているのです。

また、各項目における特性の度合いをレーダーチャートで示しているため、パッと見ただけでも、自分の性格を視覚的に捉えることができます。

エゴグラム

性格を8つの構成要素として判定する「エゴグラム」も、性格特性論の考え方に基づいた性格診断テストであると言えます。

エゴグラム

エゴグラムは相性科学者である松村有祐氏によって開発されたテストで、105問の質問に回答することで、性格を構成する8つの要素が「豆腐メンタル」や「察しが良すぎ」など、どんな人にもわかりやすいシンプルな言葉で表示されます。

詳しい結果を見るためには有料コンテンツの購入が必要となりますが、無料での利用だけでも自分自身の特性を理解するヒントとなってくれるでしょう。

病院・相談機関で性格検査を受ける

「科学的なエビデンスがあるテストで性格特性を知りたい」という方は、病院や相談機関での性格検査受検がおすすめです。

ただし、病院や相談機関はあくまで治療を専門とする場所。

「性格検査を受けたい」と一方的に訴えるだけでは、受検をOKしてもらえないことも少なくありません。

  • どんなことに困っているのか
  • どうして性格特性を知りたいと思ったのか

をきちんと説明してみましょう。

専門家の視点でも「性格特性を知ることがこの人の役に立つだろう」と判断してもらえれば、あなたにぴったりの性格検査を用意してもらえるはずです。

まとめ

性格特性とは、「人の性格はいくつもの特性が集まってできたもの」と捉え、特性の程度を数値化することで、その人の性格を表現しようとする考え方です。

オールポートが「特性」という言葉を用いたのが起源とされており、キャッテルやアイゼンクをはじめ、多くの心理学者が独自の特性論を提唱してきました。

現在ではゴールドバーグが提唱した「ビッグファイブ」の考え方が主流となっています。

自分の性格特性を知る方法としては、インターネット上の性格診断テストが参考になります。

ただし、「きちんとエビデンスのある性格特性検査を受けたい」と思ったときには、病院や相談機関で専門家に依頼しましょう。

公認心理師・臨床心理士。これまで精神科・児童相談所・療育施設などで臨床経験を重ね、現在はスクールカウンセラーとして勤務。そのかたわらでライター活動にも取り組んでいる。