心理学の世界では、人の性格を理解するためにさまざまな理論が提唱されてきました。
その1つが「性格類型論」と呼ばれる考え方です。
名前だけ見ると難しそうな「性格類型論」ですが、実際には「私って人見知りするタイプなの」「あの人、細かいことを気にするタイプだから」など、自分の周りの人の性格をタイプ分けして理解するという、私たちが自然と親しんでいる考え方なのです。
ここでは、性格の類型論について心理学の専門家が分かりやすく解説します。
また、自分の性格類型を知るための方法もご紹介しますので、ぜひチェックしてみてくださいね。
性格類型論とは?
性格類型論の特徴
性格類型論は、人をいくつかの類型(=タイプ)に分類して、そこに共通する典型的な性格をまとめていく方法です。
例えば、血液型占いでよく言われる「A型の人は真面目」「O型の人はおおざっぱ」なども、類型論的な性格の考え方の1つです。
類型論の考え方は直観的にイメージしやすいというメリットがあります。
その一方で「A型でもおおざっぱな人はいる」という反論もできるように、すでに用意されたタイプで分けられないグレーの部分は無視されてしまうというデメリットがあります。
このデメリットを補うように、のちに「特性論」という考え方が生まれています。
特性論については知りたい方は、下の記事をぜひご覧ください。
そもそも心理学では性格をどのように捉えているのか知りたい方は、下の記事をぜひご覧ください。
性格類型論を代表する理論
クレッチマーの体格ー気質類型論
20世紀になると「統合失調症」「躁うつ病」「てんかん」が三大精神病とされ、これらの病気を引き起こしやすい性格傾向が注目されるようになりました。
ドイツの精神医学者であるクレッチマー(Kretschmer,E.)は、体形を3つに分類し、それぞれの体格が精神病的な気質や性格に関係するという「体格ー気質類型論」を提唱しました。

シェルドンの発生的類型論
アメリカの心理学者シェルドン(Sheldon,W.H.)は、クレッチマーの体格ー気質類型論が精神病者を対象とした分類だったのに対し、健康な男性も対象として身体の発達と性格との関連について下の表2のようにまとめました。

ユングのタイプ論
スイスの精神科医・心理学者ユング(Jung,C.G.)は、
2つの根本的態度:外向性と内向性
4つの心理的機能:思考・感情・直観・感覚
を組み合わせることで、人の性格を8タイプに分類しました。
■根本的態度
根本的態度とは、性格の基礎となる部分のことで、外向性と内向性は「心のエネルギーをどこに向けているか」を示しています。それぞれの特徴は以下の通りです。
- 外向性:自分の外側に存在する他者や環境から影響を受けて決断・行動します
- 内向性:自分の内面を意識し、主観に基づいて意思決定を行います
■心理的機能
心理的機能とは、物事を理解・判断するときに活動する機能のこと。それぞれ次のような役割を果たしています。
- 思考:物事を論理的に捉える機能です
- 感情:快ー不快など、感情で物事を捉える機能です
- 直観:物事の裏側に潜む意味が本能的に頭に浮かびます
- 感覚:五感を通じて、物事全体をあるがまま記憶します
これらを組み合わせた8つのタイプは、以下の表3のようになります。

シュプランガーの価値類型論
ドイツの哲学者シュプランガー(Spranger,E.)は、「人がどんなものに価値を感じるのか」に着目して性格を6つに分類しました。
以下の表4にそれぞれのタイプと性格をまとめています。

自分の性格類型を知るには?
「自分の性格類型はどうやって知ればいいの?」と思っている方は、ぜひ次の2つの方法を試してみてください。
性格診断サイトを参考にする
インターネット上には、たくさんの性格診断サイトがあります。
ここでは、その中でも心理学の理論をもとにした性格診断サイト2つをご紹介します。
なお、これらの診断サイトは心理学理論をベースとしているものの、科学的なエビデンスが証明されているわけではありません。
全てを鵜呑みにするのではなく、参考程度にするようにしてください。
16 Personalities
1958年、先ほどご紹介したユングのタイプ論をもとに「MBTI(Myer-Briggs Type Indicator)」と呼ばれる性格テストが開発されました。
そのMBTIをさらに簡略化したのが「16 Personalities(16パーソナリティ性格診断テスト)」です。
質問文に対して「同意するー同意しない」の度合いを7つの段階から選んで回答します。
全60問となっていますが、深く悩まず、思い浮かぶままに答えていくことが求められているため、時間はそこまでかかりません。
そして、全てに回答すると16の性格タイプの中から、あなたに当てはまるものが結果として提示されます。
エゴグラム性格診断
アメリカの精神科医であるバーン(Berne,E.)が提唱した交流分析の理論をもとに、バーンの弟子であるデュセイ(Dusay,J.M.)が考案したのが「エゴグラム性格診断」です。
エゴグラムについての詳しい解説は次の記事にまとめています。
エゴグラム性格診断を体験できるサイトはたくさんありますが、下のサイトは臨床心理士の方と大学院で社会心理学を学んだ方が作成しており、結果も総合診断だけでなく、仕事・友人関係・恋愛関係など、さまざまな面から丁寧に記述されています。
エゴグラム性格診断
もちろん、このエゴグラム性格診断もエビデンスが証明されているものではありませんが、「自分がどんなタイプか知りたい」というときの参考になるはずです。
病院・相談機関で性格検査を受ける
「ちゃんとエビデンスがあるテストで性格類型を知りたい」という方は、病院や相談機関で性格検査を受けるようにしましょう。
ただし、病院や相談機関は「性格検査を受けたい」「性格類型を知りたい」と伝えたからといって、すぐに性格検査を受けさせてくれるわけではありません。
「性格検査を受けることが本当にあなたの役に立つかどうか」「どの性格検査が適しているのか」を吟味した上での受検となります。
- 今、何に困っているのか
- どうして性格類型を知りたいと思ったのか
を真摯に説明してお願いしてみましょう。
まとめ
性格類型とは人をいくつかの類型(=タイプ)に分類することで、典型的な性格を理解する方法です。
今回は、クレッチマーの体格ー気質類型論、シェルドンの発生的類型論、ユングのタイプ論、シュナイダーの価値類型論をご紹介しましたが、これら以外にも多くの類型が発表されてきました。
自分の性格類型を知る方法としてはインターネット上の性格診断が手軽ですが、エビデンスのあるしっかりとした結果を得たいのであれば、病院や相談機関に依頼し、専門家のもとで性格検査を受検することをおすすめします。