「親しき仲にも礼儀あり」ということわざが示している通り、「親しい間柄だから、これくらいは大丈夫だろう」と気を緩めたまさにそのとき、ふとした言葉や態度が二人の間に修復できないほどの溝を作ってしまうことがあります。
この記事では、壊れてしまった人間関係を修復したい方に向けて、
- 人間関係を修復する方法
- 人間関係を修復するときに注意すべき点
- 人間関係が修復できない場合の対処法
の3つをご紹介します。
「早く元の状態に戻りたい」「どうすれば許してもらえるんだろう」とお悩みの方に、今日から取り組めるヒントをたくさん用意していますので、ぜひチェックしてみてください。
人間関係を修復する方法とは?
いったん小休憩を取ってクールダウンする
人と言い争いになって「言わなくていいことまで言ってしまった」と後悔した経験のある人は多いのではないでしょうか。
これはストレスが冷静な判断力を失わせてしまうからなのです。
アメリカのホームズ(Holmes,T.H.)とレイ(Rahe,R.H.)は、生活イベントについてのストレスを数値化し、1968年に「社会的最適王評価尺度」を開発しました。
それをもとに日本でも同じように、日本の文化や環境に合わせた尺度がいくつか作成されました。
そのうちの1つが、文部科学省のHPに掲載されている三川俊樹によるものです。

この表で人間関係のトラブルに関するイベントをオレンジ、人間関係の破綻に関するイベントを黄色で色付けしました。
これを見ると、人間関係が不安定な状態が非常に大きなストレスとなることが分かります。
このように大きなストレスがかかると「交感神経」が活発になります。
交感神経はストレス状況に立ち向かうため、脳や身体を興奮させ、攻撃性や瞬発力を強める働きを持っています。
そのため、人間関係でトラブルが発生すると相手を責める言葉を反射的に言ってしまいやすくなります。
その結果、取り返しがつかなくなることも多いのです。
言い争いが起こってしまったときには、お互いに距離を置き、いったん小休憩を取りましょう。
クールダウンすることで、二人の間の亀裂をこれ以上広げずに済みます。
自分が悪かった点を整理・反省する
クールダウンできたら、自分が悪かった点を整理し、反省します。
ただし、頭の中だけで考えて整理しようとすると、脳は「思考」に加え、考えた内容の「記憶」や「整理」にまでエネルギーを割かなければならなくなります。
エネルギーが分散してしまうため、思考さえも十分に出来なくなってしまうこともあります。
思考に集中するためにも、考えたことは紙にどんどん書き出し、記憶や整理の作業は紙上で行うようにしましょう。
書いていくうちに「自分の何がダメだったのか」「どうして相手が怒ったのか」「これからどうすればいいか」が見えてくるはずです。
悪かった点を素直に謝る
自分の気持ちが落ち着き、悪かった点を冷静に分析できた上で「相手と良好な関係に戻りたい」と思うなら、素直に謝るようにしましょう。
相手に伝えるべき内容としては、次の3点が基本となります。
- 謝罪の言葉:「ごめんなさい」「この度は申し訳ありませんでした」
- 自分の悪かった点:「つい感情的になってしまいました」「〇〇という発言は配慮に欠けていました」
- 今後の対策:「今後は感情が高ぶったら10分間、頭を冷やすようにします」「これからはあなたの気持ちを尊重した言葉を選ぶようにします」
きちんと反省し、改善しようとする姿勢が伝わるよう、今後の対処法はできるだけ具体的かつ現実的な方法を考えるようにしましょう。
ただし、今後の対策に「気になったときには言ってほしい」など、相手を巻き込むのはやめましょう。
「なんであなたのために私が!」とかえって怒りを感じさせてしまうこともあるからです。
まずは自分だけで取り組める対策を考えてみてください。
お互いに冷静になったら話し合って振り返る
お互いに冷静になり、心に余裕ができたら、今回のトラブルについて話し合いの時間を設けて振り返ってみましょう。
ただし、トラブルの原因に注目すると「キミのひとことが…」「あなたが〇〇したから…」と、お互いに原因を押し付け合って、再びギスギスしてしまうことも。
「ご飯の時間になったら一時休戦する」「『散歩してくる』と言ったらそれ以上口論しない」など、今後トラブルが起きても気持ち良く過ごすルールを一緒に見つける時間にしましょう。
人間関係を修復するときに注意すべき点
自己防衛はしない
誰だって自分の悪いところを受け入れるのは苦しいもの。
そのため、どれだけ反省していても「でも、あなただって悪いところがあった」「キミの言葉に傷ついたから〇〇してしまったのに」など、相手を責めたくなる気持ちを完全に消すことは困難ですし、心の動きとしてはむしろ自然なことです。
しかし、人間関係の修復をしたいと考えている以上、相手を責める言葉を口に出すのは絶対にNG。
さらなる関係悪化の火種となる恐れがあります。
多少ぎこちなくても良いので、否定的な言葉はグっと飲み込み、優しく肯定的な言葉を使うように意識しましょう。
悪いと思っていないことまで謝らない
「早く関係を修復したい!」と焦るあまり、「自分が悪い」と思っていないことまで謝ってしまう人がいます。
しかし、悪いと思っていないことを修正するのは大変です。
常に自分の気持ちとは裏腹な行動を取ることになりますし、相手に嘘をついた状態で付き合い続けなければなりません。
一時的には良い関係を取り戻せたと思っても、長期的に見れば関係が破綻する原因がいつも潜んでいることになるのです。
相手を本当に大切に思い、長く付き合い続けていきたいのであれば、自分にも相手にも嘘のない形で謝るようにしましょう。
人間関係が修復できない場合の対処方法
相手が許せる気持ちになるのを待つ
どれだけあなたが真摯に謝罪したとしても、相手が「許せない」と思っている間は、人間関係の修復はできません。
人間関係のトラブルは、ふとした気の緩みから、相手の心や身体を尊重できていないときに起こります。
それなのに、「謝ったんだから許してよ!」と相手の心を無視する要求を行えば、相手を失望させ、「やっぱり自分のことしか考えていない」とますます許せない気持ちにさせてしまうでしょう。
人間関係を修復したいと願うなら、相手の心が「許そう」と思えるまで、待ち続ける必要があります。
もちろん、それまで相手を裏切るような行動を取らないことは大前提です。
専門家に相談する
どうしても自分と相手だけで人間関係の修復できない場合には、専門家に相談するという方法もあります。
例えば、職場の人間関係であれば、社内の産業カウンセラーに相談すると良いでしょう。
また、こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイトでは仕事や職場に関する様々な相談窓口がまとめられていますので、「社内の人には話したくない」という人にもおすすめです。
また、それ以外の家族・夫婦・友人・親子・恋人などの人間関係の修復でも、カウンセラーによる相談が可能です。
一般社団法人日本臨床心理士会「臨床心理士に出会うには」では、日本全国の臨床心理士が在籍している相談機関がまとめられていますので、近くにある相談機関を見つけることができます。
その他、電話相談やメール相談など人間関係について相談できる窓口はたくさん用意されていますので、ぜひ活用してみてください。
二人だけでは修復への道が見えなくても、専門家という第三者を挟むことで、新たな解決策が見つかることもあります。
まとめ
この記事では、「人間関係を修復する方法」「人間関係を修復するときに注意すべき点」「人間関係が修復できない場合の対処法」の3つをご紹介しました。
また、「どれだけ関係修復を頑張っても、何度も同じ失敗をしてしまって関係が長続きしない」という人は、人間関係の失敗パターンを身につけてしまっているかもしれません。
【失敗は成功の元】人間関係に失敗する原因とそこから学ぶべきことでは、失敗パターンから脱却するための方法を紹介していますので、ぜひ合わせてご覧ください。
参考文献 文部科学省 CLARINETへようこそ 第2章 心のケア各論