「つながり」や「きずな」など、人間関係についての言葉はポジティブに語られがちです。
しかし、最初は心地良いつながりだったはずなのに、気がつくと自分の自由を奪う「手かせ」や「足かせ」になっていることもあるのです。
人間関係のネガティブな面が大きくなると「もう自由になりたい!」と、一気に人間関係を絶つ「人間関係リセット症候群」に陥ってしまう人がいます。
この記事では
- そもそも人間関係リセット症候群とは何か
- 人間関係リセット症候群になりやすい人の特徴
- 人間関係リセット症候群にならないための対処法
の3つをご紹介します。
「もしかして私も人間関係リセット症候群かも?」と感じている方は、ぜひ読んでみてください。
リセットしたくなるほど苦しい人間関係を改善するヒントを得られます。
人間関係リセット症候群とは?
突然連絡や消息を絶ってしまう
人間関係リセット症候群とは、「ある日突然にこれまでの人間関係を捨ててしまうこと」を指します。
例えば、
- 電話やメールなどの連絡先を変更・着信拒否する
- SNSのアカウントを削除したり、友人をブロックしたりする
- 引越しして住所を知らせない
- 急に仕事を辞めてしまう
といった行動を取ったことはありませんか?
あるいは、そういう人は身近にいませんか?
それはリセット症候群の兆候かもしれません。
医学的な病気ではない
「症候群ってことは病気なの?」と思われるかもしれませんが、人間関係リセット症候群は医師から診断を受けるような病気ではなく、「なぜか突然人間関係を捨てたくなる人たち」を分かりやすくまとめた表現でしかありません。
そして、人間関係を捨てたくなる背景には、1人1人異なった原因が隠れているため、「この薬を飲めば治る」「この治療法で治る」といった治療はできません。
そのため、人間関係リセット症候群に悩んでいる方は、カウンセラーの力を借りるなどして、自分自身の心と向き合い、原因を解明・対処していくことが必要です。
人間関係リセット症候群になりやすい人
他者に合わせて自分を使い分けている人
「誰からも好かれたい」という気持ちが強い人は、ありのままの自分の考えや感情を抑え、「他者に気に入られる自分」を作り上げます。
しかし、Aさんは「真面目な人が好き」でも、Bさんは「真面目な人はつまらない」と思うことがあります。
つまり、誰からも好かれるためには、いくつもの自分を使い分けねばならないのです。
相手が代わるたびに自分を変えていくのは大変なこと。
少しずつ負担が蓄積され、限界が来たとき「もう疲れた!」と人間関係をリセットしてしまうのです。
人間関係をリセットしたいと思っている人に伝えたいことでは、「人間関係をリセットしたい」と感じる心理について丁寧に解説しています。ぜひこちらも合わせてお読みください。
人間関係に苦痛を感じやすい性質を持っている人
もともと人間関係に苦痛を感じやすい性質を持っている人は、そうでない人よりも人間関係リセット症候群に陥りやすい傾向があります。
ここではそんな性質を2つご紹介します。
HSP(Highly Sensitive Person)
人間関係リセット症候群になりやすい性質の1つが「HSP(Highly Sensitive Person=非常に感受性の鋭い人)」です。
HSPは生まれつき、次のような特徴を持っています。
- 刺激に敏感:音・光・におい・味・暑さや寒さ…といった五感で受け取る刺激に敏感に反応します
- 空気を読みすぎる:人の表情や声のトーンなど様々な情報から場の空気を読み取り、相手を不快にしないよう心を砕きます
- 他者に共感しすぎる:HSPの人は他者の気持ちが自分の中に流れ込むように共感してしまうため、他者の気持ちに振り回されてしまいがちです
他の人は気にしないような小さな刺激や些細な情報も逐一受け取ってしまうため、HSPの人はそうでない人よりも疲れを感じやすくなっています。
そのため、人間関係でも「声が大きすぎる」「香水のにおいがきつい」「この空気に耐えられない」「悲しい気持ちが分かってしまう」などしんどさを感じるきっかけが多く、最終的に人間関係リセットに至ってしまうのです。
スキゾイドパーソナリティ障害
スキゾイドパーソナリティ障害(シゾイドパーソナリティ障害)は、社会的な関わりに関心がなく、他者と交流している際に「楽しみ」や「喜び」を感じていないように見える人たちのこと。
DSM-5(注1)では、以下の4つ以上が成人期早期までに始まっていることがスキゾイドパーソナリティ障害の診断基準になっています。
- 家族の構成員とのものを含め、親密な関係を求める欲求がない、またはそのような関係を楽しまない
- 1人での活動を強く好む
- 他者との性的活動に対する興味が、あるとしてもごくわずかである
- 楽しみを得る活動がほとんどない
- 場合により第一度親族(注2)がいること以外に、親しい友人または相談相手がいない
- 他者からの賞賛または批判に対して明らかに無関心である
- 感情的に冷たい、超然としている、または平板である
※MSDマニュアルプロフェッショナル版「シゾイドパーソナリティ障害(ScPD)」より引用
こういった特徴を持っているにも関わらず、仕事などでどうしても人間関係を必要とする機会が増えてくると「1人になりたい」と、いきなり人間関係をリセットして、引きこもってしまうこともあります。
注1:アメリカ精神医学会が出版している「精神障害の診断・統計マニュアル(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)」の第5版のこと
注2:親子や兄弟のこと
また、人間関係リセット症候群には、大切な人だからこそ一緒にいるのが怖くなる「見捨てられ不安」が関係していることも。
見捨てられ不安については人間関係をリセットされた人に伝えたいことで詳しく書いていますので、ぜひあわせてお読みください。
人間関係を窮屈にする考え方を持っている人
人の考え方にはクセがあります。
そして、その人自身を苦しめてしまうような考え方は「認知のかたより」や「認知のゆがみ」と呼ばれます。
この認知のかたよりには、人間関係を窮屈にしてしまうものもあります。
例えば、
- 完璧主義:自分にも他者にも完璧であることを求める
- 過度の一般化:1回悪いことが起こると「これからもうまくいかない」と考える
- 感情的決めつけ:十分な証拠なく「〇〇に違いない」と勝手に決めつける
といった認知のかたよりを持っている人は、人間関係でのトラブルを繰り返しやすく、その結果、「もう面倒くさい」と人間関係リセット症候群に陥ってしまう可能性があるのです。
人間関係リセット症候群にならないための対処法法
自分自身の心と身体と向き合う意識を持つ
人間関係リセット症候群になってしまう大きな原因は、自分よりも他者を重視してしまうから。
そのため、人間関係リセット症候群を予防するには、普段から自分の心や身体が訴える「〇〇したい」「××は嫌だ」という声に耳を傾け、応えてあげることが大切です。
「でも、そもそも自分の心や身体の声が分からない…」という方には、レーズンエクササイズがおすすめ。
■レーズンエクササイズの方法
- レーズンを1粒用意します。レーズン程度のサイズでしっかりと香りや味があるものなら、それでも代用可能です。
- レーズンを指でつまみ、押してみたり、色々な角度から眺めてみたり、手のひらで転がしてみたり…触覚や視覚を使って、レーズンをよく観察します。
- レーズンを鼻に近づけ、嗅覚を存分に働かせながら香を楽しんでみましょう。
- レーズンをゆっくりと口にふくみ、舌の上で転がしてみましょう。舌の触覚を使うイメージで、レーズンの凹凸や表面の感じを楽しみます。
- レーズンをゆっくりと噛み、じんわりと染み出す味を味覚でたっぷり楽しみます。
- 十分に味わったら、ゆっくりと飲み込み、レーズンが喉→食道→胃へと動いていくのを感じましょう。
このトレーニングによって「自分が何を感じているか」に目を向ける習慣ができます。
わざわざレーズンを用意しなくても、ご飯やおやつの時に「感覚を大切にして食べてみよう」と意識するだけでもOK。
少しずつチャレンジしてみましょう。
ひとりの時間や場所を確保する
人間関係での疲れを蓄積させず、意識的に解消していけば、「もう限界!」といきなり人間関係をリセットしてしまうことを防げます。
ぜひ、ひとりになれる時間や場所を用意してみてください。
そして、自分の好きな活動をたっぷり楽しみ、リラックスして、疲れやストレスを解消しましょう。
また、ひとりの時間や場所が確保できれば、どれだけ人間関係がつらくても、「あそこに行けば1人になれる」「あの時間になれば1人でゆっくりできる」という安心感を持って人と付き合えるため、それだけでも負担感が軽減されます。
まとめ
この記事では、人間関係リセット症候群についてまとめました。
人間関係リセット症候群とは、突然連絡や消息を絶ってしまうこと。
医学的な病気ではないため、自分の心と向き合い、原因解明・対処することが必要です。
人間関係リセット症候群になりやすい人には、以下の3タイプがあります。
- 他者に合わせて自分を使い分けている人
- 人間関係に苦痛を感じやすい性質を持っている人:HSP・スキゾイドパーソナリティ障害
- 人間関係を窮屈にする考え方を持っている人
人間関係リセット症候群にならないための対処方法としては、
- 自分自身の心や身体と向き合う意識を持つ
- ひとりの時間や場所を確保する
の2つをご紹介しました。
参考文献 厚生労働科学研究費補助金こころの健康科学研究事業「精神療法の実施方法と有効性に関する 研究」うつ病の認知療法・認知行動療法(患者さんのための資料)