人間関係をリセットしたいと思っている人に伝えたいこと

人間関係をリセットしたいと思っている人に伝えたいこと

「人間関係が面倒くさい!」と感じたことがある人は多いのではないでしょうか。

その時にふとよぎる「リセットしてしまおうかな」という考え。

なんだかスッキリしそうで魅力的ですが、簡単に人間関係のリセットを選んでしまうと、大きな後悔に襲われてしまうこともあるのです。

この記事では

  • 「人間関係をリセットしたい」と思うまでの心理状態
  • 人間関係をリセットするメリット
  • 人間関係をリセットするデメリット

の3つをわかりやすく解説します。

今、「人間関係をリセットしたい」という思いでいっぱいな方でも、この記事を読めば、これから取るべき行動を冷静に見つめられるはずです。

人間関係をリセットしたいと思うまでの心理とは?

ここでは、人間関係をリセットしたいと思うまでの心理を4つのステップに分けてご説明します。

他者から認められたい「承認欲求」

私たちは「他者から認められたい」という欲求、「承認欲求」を持っています。

アメリカの心理学者アブラハム・マズローは人間の欲求を5つの階層に分類した「欲求階層説」を提唱しました。それを表したのが図1です。

図1マズローの欲求階層説

マズローは、下の階層の欲求が満たされると、1つ上の階層にある欲求が現れると考えました。

つまり、「生理的欲求」が満足すれば、次は「安全の欲求」を満たそうとする…という風に、人の持つ欲求は変化していくことを示したのです。

多くの場合、日本で暮らす人は、家族・学校・職場など何らかの社会集団に所属しており、「社会的欲求」までは満たされていると言えます。

その結果、次の階層にある「承認欲求」を満たしたいと感じる人が多いのです。

認められるために「キャラ」を作り上げる

他者から認められる方法はたくさんあります。

その中の1つが受け入れられる「キャラ」を作るということ。

  • いつも冷静沈着な「クールキャラ」
  • 独特の世界観で生きている「天然キャラ」
  • 鋭いツッコミで場を盛り上げる「ツッコミキャラ」
  • ちょっと抜けていて周りにいじられる「いじられキャラ」

など、自分のキャラを確立することで、他者から「〇〇さんがいると面白い」と認めてもらえます。

キャラと人間関係の関連については様々な研究があり、井上(2017)*1は、キャラについて“複雑な人格や関係性を単純化し、固定し、安定させる”コミュニケーションツールやルールであると述べています。

キャラが安定していると、いつまでも同じパターンで関われば良いので、自分も他者も楽なのです。

自分ではない「キャラ」を演じることに疲れてくる

心理学の世界では、人の性格はいくつもの特性から構成されていると考える「特性論」が主流となっています。

例えば、「天然キャラ」の人も「天然」という特性だけではなく、「真面目」や「繊細」といった特性も持っているのです。

なお、性格の特性論について詳しく知りたい方は、【理論】性格の特性論を心理学の専門家が分かりやすく解説をご覧ください。

しかし、キャラを演じていると、「天然」以外の特性は無視されてしまいます。

千島ら(2015)*2の研究でも、キャラのデメリットとして“固定観念の形成”、“言動の制限”、“キャラへのとらわれ”の3つが明らかになっています。

「いじられキャラ」の人も時には「そんなこと言わないでほしい」と感じることがあります。

しかし、それでも本気で「やめてほしい」と言えない(=言動の制限)のは、いじられて「やめてよ~」と笑うあなたの姿(=固定観念の形成)を周りが期待していると分かっている(=キャラへのとらわれ)から。

キャラを壊したくないがために、本当に自分が感じていることや考えていることを言えない状況にだんだん心も身体も疲れてくるのです。

「キャラ」が不要になりリセットする

キャラを演じることで得られる良好な関係よりも、心や身体にかかる負担の方が大きくなったとき、これまでのキャラを「もう捨てよう!」と感じます。

しかし、あなたが演じてきたキャラを期待する人たちとの関係の中で、1から別の自分を作るのは困難です。

そのため、「別の環境で1からやり直そう!」と、これまでの人間関係をリセットしてしまうのです。

人間関係をリセットしたくなる原因については【まとめ】人間関係のリセット症候群について心理学の専門家が解説でも解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。

人間関係をリセットしたい心理に従うメリット

人間関係でのストレスがなくなる

「人間関係をリセットしたい」という気持ちが起こるのは、他者との関係の中に身を置いているからこそ。

これまでの人間関係をリセットしてしまえば、

  • SNSでの連絡1つ1つに返信するのが大変
  • プレゼントやお土産を何にするか決められない
  • 飲み会や結婚式といったイベントに出席するお金の余裕がない

といった、人間関係にまつわる悩みやストレスを一気になくすことができます。

自分らしい生活を取り戻せる

先ほどお話しした通り、「人間関係をリセットしたい」と考える人の多くは、自分の考えや感情を抑え、他者が求める「キャラ」を演じます。

「他者が」認めてくれるかどうか、「他者が」喜ぶかどうか…など、いつも他者を主役として物事を考え、自分は脇役に回ってしまうのです。

しかし、人間関係をリセットして、キャラを演じる必要がなくなれば、自分が主役の自分らしい生活を取り戻すことができます。

人間関係をリセットしたい心理に従うデメリット

リセットされた人たちの心を傷つけてしまう

人間関係をリセットしてしまうと、リセットされた人たちは「何か悪いことを言ってしまっただろうか」「もしかしてあの発言で傷つけてしまったのかも」とリセットされた理由を考え続けます。

しかも、あなたと連絡が取れないため、どれだけ考えても答えは出ず、いつまでも苦しい思いを引きずる可能性もあるのです。

そのため、リセットされた相手はあなたが思っている以上に傷つきます。

万が一、後になって「やっぱりもう一度仲良くしたい」と思っても受け入れてもらえない可能性は高いでしょう。

自分を見つめ直さないと同じことを繰り返すことも

人間関係をリセットしても、それ以降、いっさい誰とも付き合わないというのは現実的ではありません。

転職すれば新しい職場での人間関係が求められますし、引越しすれば新たな地域での人間関係が必要となる場合もあります。

そこでも「疲れた」「面倒」と感じるたびにリセットしていては、いつまで経っても生活が落ち着きません。

「人間関係をリセットしたい」と思っても、すぐに行動に移すのではなく、リセットしたくなる自分の心を見つめ直しましょう。

そして、「なぜリセットしたくなるのか」をよく理解しておくことが大切です。

まとめ

この記事では、人間関係をリセットしたいと思うまでの心理について、

  1. 他者から認められたい「承認欲求」がある
  2. 認められるために「キャラ」を作り上げる
  3. 自分ではない「キャラ」を演じることに疲れてくる
  4. 「キャラ」が不要になりリセットする

という4ステップで説明しました。

また、人間関係をリセットするメリットとして、

  • 人間関係でのストレスがなくなる
  • 自分らしい生活を取り戻せる

をご紹介すると共に、人間関係をリセットするデメリットとして、

  • リセットした人たちの心を傷つけてしまう
  • 自分を見つめ直さないと同じことを繰り返すこともある

の2つをお話ししました。

この記事を読んで「やっぱり人間関係がしんどい」という方は、【まとめ】人間関係に疲れたときの解決方法【職場・プライベート】をぜひチェックしてみてください。職場やプライベートで人間関係に疲れる原因と解決方法をまとめています。

また、「リセットまではいかなくても、自分に必要な人間関係だけ選びたい」という方には【解決】人間関係を整理した方が良い場合とその具体的な方法がおすすめです。

参考文献

*1 井上嘉孝(2017)「キャラ」とパーソナリティの発達に関するー試論ー現代的な関係性
と自己観の心理学的見直しー 人間科学部研究年報 平成29年 pp.43-61.
*2 千島雄太・村上達也(2015)現代青年における“キャラ”を介した友人関係の実態と友人
関係満足感の関連 青年心理学研究(26)pp126-146.

公認心理師・臨床心理士。これまで精神科・児童相談所・療育施設などで臨床経験を重ね、現在はスクールカウンセラーとして勤務。そのかたわらでライター活動にも取り組んでいる。