人間関係の悩みを相談するメリットと相談先の選び方【良い・悪い】

人間関係の悩みを相談するメリットと相談先の選び方【良い・悪い】

「友達と喧嘩してしまった」

「親が自分の気持ちを分かってくれない」

「上司からの叱責が怖い」

など、立場や年齢が変わっても、人間関係での悩みは尽きないもの。

そんな人間関係の悩みへの対処法としてよく言われるのが「相談」です。

しかし、「人に話すだけでは意味がない」「誰かに話すと問題がややこしくなりそう」と尻込みする人も少なくありません。

そこで、この記事では、人間関係の悩みを相談するメリットを解説すると共に、おすすめの相談先とおすすめできない相談先もあわせてご紹介します。

人間関係の悩みを相談するメリット

言葉にすることで考えが整理される

1つ悩みを抱えると、その悩みが次々と新しい悩みを生んでしまうことがあります。

例えば、もともとは「上司に叱られた」という事実に落ち込んで悩んでいたはずなのに、図1のように「上司に嫌われている」「上司は私が嫌い」「どうせ私はみんなに嫌われている」など、悩みがどんどん増え、複雑に絡まり合います。

その結果、自分が何に悩んでおり、何を解決したいのかさえ分からず、いつも漠然とした不安や苦痛を抱えた状態に陥ってしまうのです。

図1悩みが絡み合い漠然とした不安へと変容

しかし、誰かに相談するためには、その大きくなった悩みを図2のように、1つ1つ分割し、順番に言葉にしていかなければなりません。

図2他者に悩みを相談するイメージ図

相手に分かるように言葉にする中で、漠然とした不安は具体的になり、次第に「何に悩んでいたのか」「何を解決したいのか」がはっきりしてきます。

荒川(1999)*1は、糖尿病患者に対し、何でも自由に話せる雰囲気と「十分話ができた」「自分のことをわかってもらえた」と感じられる傾聴があれば、特別なアドバイスがなくても、患者自身で解決方法を見つけられることを示しています。

つまり、自分を理解してくれる他者に相談すれば、自然に解決できる可能性もあるのです。

自分には思いつかなかった新たな解決策が見つかる

私たちは、これまでの人生の中で、すでに問題解決パターンをいくつか身につけています。

例えば、「怒られたら、すぐに謝る」というのも1つのパターンです。

両親や先生から「言い訳せずに謝りなさい」と教わったかもしれませんし、とにかく謝れば相手が許してくれることが多かったのかもしれません。

しかし、世の中には、どれだけ謝っても許してくれない人もいます。

そんな人と関わらなければならない場面では、謝る以外の対処法のない人は困ってしまうでしょう。

そんな時に他の人に相談することで、「相手の気持ちが落ち着くまで待ってみたら?」「とにかく笑顔で挨拶してみたら?」など、自分にはなかった視点での解決策を教えてもらえることがあります。

1人ではないという安心感を抱ける

人間関係の悩みを抱えている人は、「周りの人は仲良くやっているのに、自分は人とうまく付き合えない」という孤独感を抱きます。

悩みを解決したい気持ちはあるものの、「失敗したら変な目で見られる」「ますます孤立するかも」と今の状況を変えることを恐れます。

そして、そのうち「どうせ自分には無理なんだ…」と解決することも諦めてしまいます。

その結果、下の図3のように、人間関係に消極的になり、さらに人間関係での悩みを深める悪循環に陥ってしまう可能性もあるのです。

図3人間関係の悩みを1人で抱えることによる悪循環

一方、人間関係での悩みを相談することで得られる良い循環を示したのが図4です。

人に悩みを聴いてもらうと「自分には味方がいる」という安心感を得られます。

そして、味方の存在は、悩みの解決に向けて「チャレンジしてみよう」という気持ちを後押ししてくれます。

その結果、悩みを解決できる可能性が高まるのです。

また、解決できなかったとしても「自分にも味方がいる」「悩みとちゃんと向き合えた」などの経験は、次に人間関係の悩みが生まれた時にも「きっと大丈夫」という自信を育んでくれるでしょう。

図4人間関係の悩み相談で生まれる好循環

人間関係の悩み相談におすすめの相談先

信頼できる家族・友人

最も手軽に相談できるのは、家族や友人です。

もし、家族や友人が「信頼できる」と思えるなら、ぜひ相談してみましょう。

ただし、「家族には心配をかけたくない」「友達には知られたくない」という悩みも少なくありません。

例えば、八田(2009)*2が大学生を対象に行った調査によると、恋人や親友の問題は親には話しにくいことが明らかになっています。

また、竹内(2010)*3は、家族の問題を表に出すことは恥ずかしいため、親友・友人に開示しにくいとしています。

そんなときには、次にご紹介する相談窓口の利用をぜひ検討してみてください。

企業や自治体が設置している相談窓口

人間関係の悩み相談には、企業や自治体の相談窓口も利用できます。

■企業の相談窓口

企業によって異なりますが、人事労務部が相談窓口となっていることが多いようです。

また、カウンセラーが常駐している企業もあります。

加えて、企業では「ハラスメント窓口」の設置が法律によって義務化されています。

義務化のスタートは企業によって異なり、

  • 大企業は2020年6月1日から義務化
  • 中小企業では2022年4月1日から義務化(それまでは努力義務)

となっています。

嫌がらせやハラスメントで苦痛を感じている場合には、ぜひ活用しましょう。

■自治体の相談窓口

「保健所」や「精神保健福祉センター」では、電話や面談を通じて、保健師・精神保健福祉士・臨床心理士などの専門家による相談を受けられます。

専門家によるカウンセリング

「身近に相談相手がいない」「家族や友達には心配かけたくない」という方は、専門家によるカウンセリングを利用してみましょう。

カウンセリングは、以下のような場所で受けられます。

■精神科や心療内科

カウンセラーが在籍しており、医師が必要と判断した場合には、カウンセリングを受けることができます。

■大学付属の相談室

臨床心理士養成の指定を受けている大学には付属の相談室が設置されています。

教員の指導のもと、大学院生によるカウンセリングを1回2,000~3,000円程度で受けられます。

■個人開業の相談室

臨床心理士や公認心理師などの専門家が開業している相談室です。

5,000円~10,000円と負担は大きいですが、経験を積んだカウンセラーによる質の高いカウンセリングが受けられます。

■オンラインカウンセリング

ビデオチャット・メール・SNSなどを活用して、インターネットを介したカウンセリングを行います。

手頃な価格と自宅で受けられるのが魅力です。

人間関係の悩み相談をすべきでない相談先

悩んでいる人間関係に近すぎる人

悩んでいる人間関係に近すぎる人への相談はおすすめできません。

例えば、Aさんとの関係についての悩みを、Aさんと共通の友人であるBさんに相談したとします。

Bさんにとっては、あなたもAさんも大切な友人ですから、どちらの味方にもなれず、板挟みになったように感じるでしょう。

また、あなたからAさんの嫌なところを聞くのも苦痛でしょうし、あなたが3人の関係を壊そうとしているように感じて不快感や抵抗感を抱く可能性もあります。

その結果、さらに人間関係がややこしくなる危険性があるのです。

冷静かつ穏やかに話を聴いてほしいと思うなら、ある程度、「第三者」である人に相談する方が良いでしょう。

ウワサ話が大好きな人

人間関係の悩みを相談するなら、ウワサ話が好きな人は絶対にNG。

どれだけ「秘密にしてね」と約束しても、「ここだけの話なんだけど」と言いふらされる可能性が高く、気づいたらみんなに知られていた…ということにもなりかねません。

人間関係の悩み相談は、相手の耳に届いてしまうと、「コソコソ悪口を言っている」「はっきり言えばいいのに!」など、相手が怒り出し、さらに状況を悪化させることも。

心が弱っていると、「大丈夫?」と声をかけてくれた人に全部話してしまいたくなりますが、ぐっと堪えて「本当にこの人は信頼できる人か」をよく考えてから相談するようにしてくださいね。

まとめ

この記事では、人間関係の悩みを相談するメリットとおすすめの相談先、絶対NGの相談先についてご紹介しました。

人間関係の悩みを相談するメリットには、

  • 言葉にすることで考えが整理される
  • 自分には思いつかなかった新たな解決策が見つかる
  • 1人ではないという安心感を抱ける

という3つがあります。

また、そんな人間関係の悩み相談におすすめの相談先としては、

  • 信頼できる家族や友人
  • 企業や自治体が設置している相談窓口
  • 専門家によるカウンセリング

などがあります。

ただし、悩んでいる人間関係に近すぎる人やウワサ話が大好きな人は、かえって人間関係の悩みを大きくしてしまう危険性があるため、相談相手としてはおすすめできません。

「第三者」かつ「秘密を守れる」という2つの条件を満たした相手を選びましょう。

また、人間関係の悩みの原因と解決方法を心理学の専門家が解説【良い・悪い】では、相談相手がすぐに見つからない場合でも、自分で出来る解決方法をご紹介していますので、こちらもあわせてご覧ください。

参考文献

*1 荒川千秋・神郡博(1999)看護相談場面のカウンセリング効果に関する研究 富山医科
薬科大学看護学会誌 2 pp133-142.
*2 八田純子(2009)大学生が抱える日常のトラブルと他者への開示について 愛知学院大
学心身科学部紀要 5 pp41-47.
*3 竹内由美(2010)大学生の友人関係における自己開示と孤独感の関係 心理相談センタ
ー年報 6 pp15-22.

公認心理師・臨床心理士。これまで精神科・児童相談所・療育施設などで臨床経験を重ね、現在はスクールカウンセラーとして勤務。そのかたわらでライター活動にも取り組んでいる。