「みんなで仲良くしましょう」「仲間外れはいけません」など、小さい頃から人間関係の大切さは繰り返し語られます。
しかし、どれだけ仲良くしたい気持ちがあっても「なぜかうまくいかない」と悩んでいる人は少なくありません。
それは、人間関係で悩む原因を正しく理解していないから。
そこで、この記事では、人間関係で悩んでしまう主な原因と、その悩みに対するおすすめの解決方法を解説します。
また、人間関係の悩みを解決できないどころか、悪化させてしまう危険性もあるNGな解決方法もご紹介しますので、あわせてご覧ください。
人間関係の悩みの原因
他者の目が気になるから
かつて「KY(空気が読めない)」という表現が流行したように、日本では他者から「空気が読めていない」「足並みが揃っていない」と思われないことが重視されています。
そのため、人間関係において他者の目が気になる人は多いのではないでしょうか。
しかし、あまりにも他者の目を気にし過ぎていると、いつも「本当はこんなことしたくないのに」と不満を抱えてしまい、「人間関係がつらい…」と悩んでしまいます。
他者が思い通りに動いてくれないから
「私だって働いているんだから、夫も家事をしてくれればいいのに」
「パワハラ上司さえ会社を辞めてくれれば気持ち良く働けるのに」
「私だって妥協しているんだから、相手も譲るべき!」
など、他者に「もっと〇〇してほしい」と思うことは多いもの。
しかし、あくまで自分と他者は別の意思を持つ存在であり、思い通りには動いてくれません。
その区別が出来ていないと「なんで思い通りに動いてくれないの?」と悩んでしまうことになります。
無理に多くの人と関わろうとするから
ここ最近、Facebookの「友だち」やTwitterの「フォロワー」の数を気にする人や、いつもスケジュール帳が人との約束で埋まっていないと不安という人が増えています。
もちろん、多くの人とつながれば、
- 暇な時に遊ぶ人を見つけやすい
- 新しい価値観を得られる
- 大勢で一体になって盛り上がると楽しい
などメリットもあります。しかし、その一方で、
- 付き合いのために時間やお金がかかる
- 1人1人と深い関係が築けない
などのデメリットもあるのです。
これらのデメリットに直面し続けると「こんなはずじゃなかったのに」と悩みを抱えることになります。
人間関係の悩みの良い解決方法
「私」を主語にやりたいことを考えてみる
いつも他者の目を気にしてしまう人は、「この服を着たらお母さんが怒る」「〇〇さんはこれが食べたいんだろうな」という風に、自分以外の他者を主語にして物事を考えがち。
まずは「私」を主語にして、やりたいことを考えてみましょう。
「私はこの服が着てみたい」
「私はカレーが食べたい」
「私は美術館に行ってみたい」
といった簡単なことからでOK。
そして、出来ることから実際にチャレンジしてみてください。
このような小さな欲求も自分できちんと満たしてあげられれば、「私もやりたいことをやれるんだ」という自信につながります。
また、チャレンジを繰り返すうちに「案外、周りの人って私のことを気にしていないんだな」という事実にも気づくはずです。
エンプティチェアで自分と他者の理解を深める
他者が思い通りに動いてくれないことに悩む人は、自分と他者の考えや気持ちが異なることをしっかり理解しましょう。
そのために試したいのが「エンプティチェア」と呼ばれる方法です。
エンプティチェアは、「自分の位置」と「相手の位置」を用意し、「相手の位置」から物事を見て、どんな考えや気持ちが浮かぶかを体験することで、自分と相手との良好な関係を築き直すための技法です。
■エンプティチェアの手順
- 椅子や座布団を2つ用意し、一方を「自分の位置」、もう一方を「相手の位置」と決めます。
- まずは「自分の位置」に座り、「相手の位置」に座っている相手を具体的にイメージします。そして、相手に対して、自分の考えや気持ちを言葉にして全て伝えます。伝え終わったら、「相手の位置」へと移動します。
- 「相手の位置」に座り、先ほど伝えられた考えや気持ちに対し、何を考え、感じるのかを味わいます。そして、浮かんできた考えや気持ちを話します。相手になりきり、座り方や口調などもしっかり再現することが大切です。
- 「自分の位置」に戻り、感じたことや考えたことを整理します。そして、伝えたいことがまとまれば、再度イメージした相手に向けて話します。
このプロセスを繰り返すことで、相手の考えや気持ちについての理解が深まり、これから「どういう態度で接すれば良いか」のヒントを見つけることができるでしょう。
本当に自分を認めてくれる人と付き合う
多くの人と関わる人は「自分を認めてほしい」という気持ちが強いと考えられます。
ただし、本当に「認められている」と感じるために必要なのは、人間関係の量ではなく「質」なのです。
河越ら(2015)*1が大学生に行った調査によると、教師や友人から注目され、認められた経験が「自分は社会の中で認められている」という自己肯定感を高めることが明らかになっています。
つまり、多くの人と付き合うよりも、本当にあなたと向き合い、認めてくれる人との関係を深める方が、あなたの「認めてほしい」という欲求を満たせるのです。
人間関係の悩みの悪い解決方法
相手を変えようとする
人間関係でトラブルが起こると「あいつが悪い」と、相手を責め、相手の問題点を指摘して変えようとしてしまいがち。
しかし、『馬を水辺に連れていけても水を飲ませることはできない』ということわざがあるように、あなたが相手を変えようとあれこれ働きかけたとしても、その人自身が「変わりたい」と思わない限り、変わろうとはしないのです。
相手が変わってくれないことに苦しむくらいなら、自分自身を変えることにエネルギーを注ぎましょう。
1人で抱え込んで我慢してしまう
「自分さえ我慢すれば」と抱え込むこともおすすめできません。
「悲しい」や「つらい」というネガティブな感情は、「心を守りましょう」「心を休めましょう」というサインです。
それなのに、自分の「悲しい」「つらい」という感情を抑え込み続けると、きちんと心を守ることも、必要な休みを取ることもできません。
その結果、心がボロボロになり、病気になってしまうこともあるのです。
人間関係の悩みは1人で抱え込まずに相談しましょう。人間関係の悩みを相談するメリットと相談先の選び方【良い・悪い】では、身近に相談できる人がいない場合でも活用できる相談先をご紹介していますので、ぜひご覧ください。
まとめ
今回は、人間関係の悩みの原因と解決方法について解説しました。
人間関係の悩みの主な原因としては、
- 他者の目が気になるから
- 他者が思い通りに動いてくれないから
- 無理に多くの人と関わろうとするから
の3つが挙げられます。
そして、これらの悩みを解決するためには、
- 「私」を主語にやりたいことを考えてみる
- エンプティチェアで自分と他者の理解を深める
- 本当に自分を認めてくれる人と付き合う
といった方法がおすすめ。
逆に他者を変えようとしたり、1人で抱え込んで我慢したりすると、状況が変わらないだけでなく、悪化することもあるので注意が必要です。
参考文献 *1 河越麻佑・岡田みゆき(2015)大学生の自己肯定感に及ぼす影響要因 日本家政学会誌 66(5) pp222-233.